これは面白い内容。1961年生まれ米国ニューヨーク州はベスページ出身のアヴァンギャルドジャズを主戦場とする個性的なサックス奏者、アンディーラスターの97年発となるソロ名義作。これまでの経歴で最も知られているところでは、ジョーヘンダーソン、ボビープレヴァイト、ユリウスハンフィル、マーティーエーリックなどなどのコンボへの参加のほか、藤井郷子オーケストラにも参加している実力者ながら一般的な知名度はうんと低くて、現代ジャズの渦中ではほぼ無名と言っても良い存在。そんなこの人の全部で5作程度が確認されているソロ名義作中ではなぜかチェンバープログレ本流へと接近してしまったのが本作ということで、まずは編成のほうは、アンディラスター(各種管楽器)を中心にチェロ、ドラムス、マリンバ、ヴィブラフォン、ベル、テンプルブロック、トランペットなどなどの各奏者を揃えた布陣。いずれの奏者も現代ジャズの渦中のマイナーリーグで活躍を続ける中堅どころのテクニシャン揃い。で、これだけの演奏者が集結していながらも本作に於ける演奏が本当に変テコで、あえて素人演奏を擬態したようなたどたどしさとか、不安定に揺れる音程、ズレそうでズレないユル~い雰囲気だとかってちょっと60年代のマザーズオブインヴェンションをも思わせ、しかも楽曲は奇数拍から複合拍にアクセントずらしを駆使したチェンバープログレにしか聴こえないというのもヤバイところ。総体的に見れば確かに現代ジャズ由来の演奏法で濾過されてはいるものの、もしもコレが80年代初頭のRIO系第一世代に混じっていたとしても何の違和感もないどころか、例えばベルギーのジュルヴェルヌ、カナダのコンヴェンタムと並べて評価されていたかもしれない怪作。ある意味で現代ジャズの側からチェンバープログレへの接近を試みたとみるべきなのか?、単に偶然だったのか?、或いはアンディラスターご自身が隠れプログレ好きだったのかどうかは非常に興味深いところ。ANDY LASTER-interpretations of lessness(songlines recordings)