1947年生まれ、米国はワシントンDC出身ながら育ったのは英国だったというレコメンデッドレコーズメガコープの運営者として計り知れないほどの重要作を世に投下し、ドラムス奏者としては既に1966年の英国サイケデリックシーンのど真ん中でそのキャリアを開始したという、後のレコメン系のとか、ヘンリーカウのとかっていう以上に実はジミヘン、クリーム、レッドツエッペリン、ピンクフロイドなどと同世代のブリティッシュロック渦中を潜り抜けてきた、音盤は残していなくともそれらとほぼ同世代のミュージシャンだったという事で、たまたま世界的に認知され始めたのがヘンリーカウの頃だったというのが実相に近いこの人のキャリア。で、本作はと言えば、この人の完全なソロ名義作としては意外な事にまだ3作目に位置する2006年リリース作で、配給は当然のようにReR Megacorpから。という訳でそういう略歴なんかぶっ飛んでしまうほど本作の内容がとにかくヤバイ。というかクリスカトラーの実際の音楽性は実はコレだったのか?と誰もが驚くような、精緻な音響工作物が現前しているというべきか、ここにはドラムスソロなんか有るハズも無く、ましてやカシーバーやヘンリーカウなんか期待しても徒労に終わるだけで、あれらは結局はこの人の一つの通過点にしか過ぎなかったというのが良く解るのが本作の衝撃的な立ち位置。内容は端的に言って汎エレクトロアクースティック系音響コラージュの枠内にあり、この種の様々な形態、ミュージックコンクレート、アクースマティック的な表現法で構築されているにもかかわらず、非常に個性的というのは恐らくはこれまで関わってきたクリスカトラー自身の音楽的な変遷からしか出てこなかったであろう音響センスそのものといった印象。様々なロケーションでの環境音、生演奏の断片、得体の知れない音ネタの数々などが全46トラックに渡りビッシリと敷き詰められ、これらが切れ目なしに連続しながら展開していく音響コラージュ超大作。必聴!!! CHRIS CUTLER-There And Back Again(ReR)