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人間国宝シリーズ5・中里無庵・重要無形文化財・唐津焼/本書は無庵先生が自ら選んだ46点に13代太郎右衛門氏が解説を付したものである
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昭和59年 40P 35.4㎝×26.4cm程度 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
中里太郎右衛門(12代) なかざとたろうえもん
1895－1985 大正-昭和時代の陶芸家。
明治28年4月11日生まれ。昭和2年12代をつぐ。唐津(からつ)古窯跡の調査をおこない,古唐津の技法を研究,復興につとめる。40年唐津焼初期の割竹式登り窯を復元した。44年出家し無庵と名のる。51年人間国宝。昭和60年1月5日死去。89歳。佐賀県出身。有田工業卒。幼名は重雄。
唐津は、現在、唐の字を用いているが、もともと韓より出ている。「魏志倭人伝」にもみえるように、韓国南岸より対馬、壱岐をへて九州本土に上陸するはじめての土地であった。縄文晩期より弥生時代にかけて、大陸の稲作農業や 青銅器はまず唐津に流入した。
唐津も有田、上野、護摩、萩などと同じく文禄・慶長の 役以降の製作と説かれていたが、そのはじまりについては、 いまだ多くの問題をのこしている。壱岐・勝本の聖母神社に 天正二十年(一五九二)の銘をもつ耳付壺があり、唐津城博物館に保管されている北波多村の壺も、古調をもつもので、文禄以前に松浦党の地域にすでに李朝陶工がうつって、製作を開始した可能性を、みとめておいてもよいであろう。 無庵先生は、自ら土と新をもとめ、つくり出していったものの強さと美しさに、ことに自信をふかめていったと思われる。柳宗悦氏の主宰する『工芸』を愛読し、民芸の美にひかれ、また、加藤唐九郎氏をはじめ、各地の陶工の来訪によって、一人でさがし求めていた道にも、多くの同じ仲間があったことを知ったのであった。
本書に収載した作品四十六点は、無庵先生が、永年の作品の中から自ら選んだもので、十三代太郎右衛門氏が解説を付したものである。また、河原正彦氏がこれについて詳細な評論をつけている。無庵先生の井戸茶盤、絵唐津、斑唐津、 鮮唐津は、古唐津の技法によりながら、すでにこれを超えている。昭和八年につくった朝鮮唐津かけわけ水指は、斑唐津をつくろうとしていたので、はじめ失敗作とおもっていた。 宋約窯と同じものが出来ていたのに、これは中国陶磁の勉強が足りなかったからで、これからの陶工は、中国陶磁をもっと勉強しなければ、と無庵先生は謙虚に話される。しかし、古唐津の真髄を会得された先生が、いつも日本伝統工芸展などに出品されるのは「叩き唐津壺」である。叩きの技法は、 韓国の金海式土器にはじまり、新羅土器にも盛んで、日本の弥生土器や須恵器にも伝わっている。古唐津にもみられ、唐津では近年まで表などの製作に盛んに用いられていた。
私のように、日本の古代土器、大陸の陶磁をみつけているものからみると、先生の叩きの壺は、日本の須恵器と自然釉、 古代朝鮮の印文陶、中国の越州窯のおもかげを伝え、本当になつかしく、また心のあたたまる作品である。
風雪をくぐりぬけ、古唐津への回帰の中に新生面を開拓された先生は、よき夫人、よき子息たちに恵まれ、今年(一九七九年)八十四歳、さらに精進をつづけておられる。枯淡にみえる先生の顔は、その陶芸作品とならんで、また先生の最大の作品の一つであるかも知れない。 (九州大学文学部教授)
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