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沖永良部島民俗誌/柏常秋・柳田国男/昭和29年/時代の推移と共に滅び行く習俗の多いのが惜しくこれを収録しておくことの必要が痛感された
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昭和29年 213P 刊行会委員は柳田国男 著者は柏常秋。 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
私が郷里沖永良部島の民俗研究を思い立ったのは、本籍を鹿児島市に移した大正十五年の春で
柳田先生の名著「海南小記」が世に出て間もない頃のことであつた。その動機は、時代の推移と共に滅び行く習俗の多いのが惜しく、これを収録しておくことの必要が痛感され、同時にこれを離郷記念に供しようとする一石二鳥の意図によるものであつた。この心境が「海南小記」に影過 されていることはいうまでもない。
ところが、多忙な教職についている者の多くが経験するように、教務以外の研究に心を傾ける余裕のあるものでなく、僅に業務の片手間に諸書をあさり資料を集めているうちに、二十余年の歳月は夢のように過ぎ去つて、民俗の面に全力を打込むようになつたのは、昭和二十二年四月、
教壇を去ってから後のことであった。けれども、当時は戦後の混乱が絶頂に達している頃で、南西諸島との交通・通信機関は殆ど全く麻痺状態を呈していたので、現地への渡航が容易でないばかりか、書信すら到達までに四・五箇月を要するという実情であった。従って研究上緊要な資料を現地より徴することは、殆ど絶望的であつたので、いきおい郷里を離れて内地に在住している知人にたよる外はなかつた。
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