★ギュスターヴ・ル・ボン(Gustave Le Bon、1841 1931年)は、フランスの社会心理学者。医学を修めた後、心理学や人類学、物理学など学問的関心は多方面に及ぶ。1860~80年代にヨーロッパやアジア、アフリカを遍歴し、そのなかで考古学や人類学に関する執筆も行なう。やがて関心は社会心理学へと向かい、1895年の『群衆心理(La psychologie des foules)』によって名声を得る。同書の中で、ル・ボンは「今われわれが歩み入ろうとしている時代は、群衆の時代である」と論じた。ここで、群衆とは、その構成員すべてが意識的人格を完全に喪失し、操縦者の断言・反復・感染による暗示のままに行動するような集合体であり、産業革命以後の社会現象の特徴が人びとをこうした群衆心理下に追いやると論じた。
★内容: インターネットやSNSの隆盛で、常に他者の動向に注意を払わずにはいられない私たち。その影響で、現代人は自主的に判断・行動する主体性を喪失し、極論から極論へと根無し草のように浮遊し続ける集団と化すことが多くなった。今から一世紀以上も前に、そうした集団を「群衆」と呼び、彼らの心理を鋭い洞察をもって分析した一冊の本、「群衆心理」。フランスの心理学者ギュスターヴ・ル・ボンによる社会心理学の嚆矢となる名著をひも解く。
ル・ボンは、群衆が歴史に表舞台に躍り出てきた原因が、西欧を支えていた伝統的な価値観が崩壊したことにあるという。自分たちを縛る箍がはずれた時、群衆はその盲目的な力を発動させた。人は、群衆の中にいるとき「暗示を受けやすく物事を軽々しく信じる性質」を与えられる。論理ではなく「イメージ」によってのみ物事を考える群衆は、「イメージ」を喚起する力強い「標語」や「スローガン」によって「暗示」を受け、その「暗示」が群衆の中で「感染」し、その結果、群衆は「衝動」の奴隷になっていく。これが「群衆心理のメカニズム」である。
18世紀後半から19世紀、圧倒的な多数を占め始めた彼らが社会の中心へと躍り出て支配権をふるうようになった。彼らを動かす「群衆心理」が猛威を振るい続ければ、文明の衰退は避けられない。群衆心理は指導者やメディアによってたやすく扇動される。扇動者らは、しばしば精緻な論理などを打ち捨て、「断言」・「反復」・「感染」という手法を使って、群衆たちに「紋切り型のイメージ」、「粗雑な陰謀論」、「敵・味方の単純図式」を流布していく。極度に単純化されたイメージに暗示を受けた群衆は、あるいは暴徒と化し、あるいは無実の民を断頭台へと送り込むところまで暴走を始め、こうなるともはや事実の検証や論理では止めることができなくなるのだ。
ル・ボンのこうした分析は、SNS全盛時代における民主主義の限界やポピュリズムの問題点を鋭く照らし出している。果たして、私たちは、群衆心理とどう向き合ったらよいのか? 現代の視点から「群衆心理」を読み直し、「単純化」、「極論」に覆われた社会にあって「思考し問い続ける力」をどう保っていけばよいかを考える。
★ギュスターヴ・ル・ボン(Gustave Le Bon、1841 1931年)は、フランスの社会心理学者。医学を修めた後、心理学や人類学、物理学など学問的関心は多方面に及ぶ。1860~80年代にヨーロッパやアジア、アフリカを遍歴し、そのなかで考古学や人類学に関する執筆も行なう。やがて関心は社会心理学へと向かい、1895年の『群衆心理(La psychologie des foules)』によって名声を得る。同書の中で、ル・ボンは「今われわれが歩み入ろうとしている時代は、群衆の時代である」と論じた。ここで、群衆とは、その構成員すべてが意識的人格を完全に喪失し、操縦者の断言・反復・感染による暗示のままに行動するような集合体であり、産業革命以後の社会現象の特徴が人びとをこうした群衆心理下に追いやると論じた。
★著者、武田砂鉄は1982年、東京生まれ。成城大学経済学部卒業。河出書房新社勤務を経て、フリーライター。初の著作、『紋切型社会』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、また(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。『文學界』、『ヘドバン』、『SPA! 』、『VERY』、『暮しの手帖』、『beatleg』、『TRASH-UP!!』、『STRANGE DAYS』などで連載を持ち、インタヴューや書籍構成なども手がける。著作はほかに『芸能人寛容論』、『せいのめざめ』(共著)、『コンプレックス文化論』、『わかりやすさの罪』など。
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