100分de名著 「エドガー・アラン・ポー スペシャル」 ◆巽 孝之（NHK出版）2022年3月
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★内容： 19世紀半ば、アメリカ文学の黄金時代を担った作家の一人、エドガー・アラン・ポー（1811-1849）。世界初の名探偵が活躍する推理小説、ゴシック風ホラー、SF海洋冒険小説、思索と哲理に満ちた詩等々・・・さまざまなジャンルをたったひとりで切り開いていった。その耽美的で退廃を極めた華麗な文体の作品群は、今も多くの人たちに愛され、読み継がれている。ポーの代表作『アッシャー家の崩壊』、『黒猫』、『モルグ街の殺人』、『アーサー・ゴードン・ピムの冒険』などの作品を通して、「欲望とは？」「美とは？」「人間とは？」そして「文学表現の可能性とは？」・・・といった奥深いテーマをあらためて見つめ直す。
ポーは、作品ごとに自在に変幻する作風が他の追随を許さず、19世紀アメリカ文学を代表する作家に数えられるまでになった。多くの作品群には彼自身の人生が色濃く反映している。幼くして母を失い父も行方不明。育てられた養父からも途中で見捨てられ天涯孤独の中、文学でひとり身を立てようとする。その後も、雑誌社からの解雇、妻との死別、新たな恋人との間の婚約破棄など不幸は続くが、そうした人生を栄養分にするかのごとく、自身の文学性を高めていく。またポーは、創作者・批評家の才能だけでなく、卓越した編集者としての能力も発揮した。マガジニスト（雑誌文学者）として文学を「商品」と捉え、読者の期待に応えるべく小説の可能性を追求し、ゴシック・SF・ホラーなどジャンルを次々と越境していったのである。文学の可能性をそのように切り拓いていったポーの作品群が、やがてボードレール、ジュール・ヴェルヌ、ナボコフ、スティーブン・キング、江戸川乱歩といった世界中の作家たちに大きな影響を与えることになる。
★エドガー・アラン・ポー（Edgar Allan Poe、1809 - 1849年）は米国の小説家、詩人、批評家。マサチューセッツ州ボストン生まれ。両親を早くに失い、商人アラン家の養子となる。少年時代をロンドンで過ごし、帰国後バージニア大学に入学するが、養父との不和により中退。出奔ののち、一時士官学校に入るもなじめず退学。その後、文筆で身をたてるべく詩や短編小説を創作し始める。24歳のとき、『壜のなかの手記（MS. Found in a Bottle）』が懸賞小説に当選。 その後、ゴシック風の恐怖小説『アッシャー家の崩壊（The Fall of the House of Usher）』、『黒猫（The Black Cat）』、世界初の推理小説といわれる『モルグ街の殺人（The Murders in the Rue Morgue）』、暗号小説の草分け『黄金虫（The Gold Bug）』など多数の短編作品を発表、また詩の『大鴉（The Raven）』でも評判を取った。ポーは有能な雑誌編集者、文芸批評家でもあったが、飲酒の悪癖や奇矯な振る舞いで悪名が喧伝され、文名を得てからも生活はほぼ常に貧窮の中にあった。ポーは、詩においても小説においても美の創造を目的とし、単一の効果をもたらすために、短く、音楽的な形式を主張した。生前および没後しばらく英米での評価はあまり高くなかったが、ヨーロッパ大陸では認められ、特にボードレールによる翻訳はフランス象徴派の文学観形成に大きく寄与した。また『モルグ街の殺人』によって近代推理小説の開祖とみなされるほか、科学的知見を取り入れた『アーサー・ゴードン・ピムの物語（The Narrative of Arthur Gordon Pym of Nantucket）』などの冒険譚はヴェルヌら後世のSF作家にも影響を与えている。
★著者、巽孝之（たつみ たかゆき）は955年、東京生まれ。国際的なアメリカ文学者。慶應義塾大学名誉教授。上智大学文学部英文学科卒業、コーネル大学大学院博士課程修了。慶應義塾大学文学部英米文学専攻教授、のち名誉教授。SF評論家でもあり、また日本英文学会監事、日本アメリカ文学会会長、アメリカ学会編集委員長、The Journal of Transnational American Studies編集委員などを歴任。主な著書に『サイバーパンク・アメリカ』、『ニュー・アメリカニズム』、『メタファーはなぜ殺される ― 現在批評講義』、『アメリカン・ソドム』、『リンカーンの世紀』、『E・A・ポウを読む』、『アメリカ文学史』など。訳書にエドガー・アラン・ポー『黒猫・アッシャー家の崩壊』、『モルグ街の殺人・黄金虫』がある。
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