・両日共通:Eternity’s Breath(★)/Stratus/Led Boots/Corpus Chisti Carol(★)/Hammerhead(★)/Mna Na Heireann(★)/People Get Ready(★)/Big Block/A Day In The Life
・初日のみ(DISC 1)の演奏曲:There’s No Other Me(★)/I Put A Spell On You(★)
●エリック・クラプトン篇(11曲)
・両日共通:Driftin’/Nobody Knows You When You’re Down And Out(★)/Running On Faith/When Somebody Thinks You’re Wonderful(★)/Tell The Truth/Key To The Highway/I Shot The Sheriff/Cocaine
・Shake Your Moneymaker(★)/Moon River(★)/You Need Love/Outside Woman Blues/Little Brown Bird/Wee Wee Baby/(I Want To Take You) Higher/Hi Ho Silver Lining(★)
※注:「★」印は日本でのジョイント公演では演奏しなかった曲。
以上のようになっています。クラプトンはこの時のジャパン・ツアーを踏襲しつつ、ショートセットにつきマイナーチェンジを加えた程度ですが、ベック篇は大胆に入れ替え。当時の“EMOTION & COMMOTION Tour”を色濃く反映した内容となりました。最大の聴きどころである共演ステージ編(DISC 3)は2日間で変化はないものの、日本公演とは3曲入れ替え。大ラスにはベックがボーカルを執る67年の彼のソロデビューシングル「Hi Ho Silver Lining」も披露されます(これを日本で聴きたかった)。中でもMoon Riverは、13年後の2022年に二人のスタジオレコーディングが実現したきっかけになったパフォーマンスだったのです!クラプトンが円熟のボーカルを聴かせると、ベックはギターに歌わせる。この珠玉のアレンジを、二人は形にして残しておきたかったのでしょう。そのシングルがベックの追悼盤として今年リリースされたのは、記憶に新しいところです。そんな二人の激レアな共演を最高音質で収めた本作は、ただでさえ文化遺産級の超傑作でありますが、ベック亡き「今」という時にはあまりに重く、美しく響くのです。二度と起きる事のない奇跡の夜を、得も言われぬ「現場の美音」で永久保存した超傑作です。
上記にも前年の日本でのジョイント公演では演奏しなかった曲を挙げていますが、それらは3曲。 Shake Your Moneymaker、Moon River、 Hi Ho Silver Liningです。前年の埼玉でのパフォーマンスに感激された方も、セットリストが異なっただけに、本作にも是非ご注目いただきたいところです。 Shake Your Moneymakerは、古くはピーター・グリーンのフリートウッド・マックもレパートリーにしていた、エルモア・ジェイムスの61年発表の名ブルース。アップテンポのスライドギターが映えるナンバーで、二人の好みがよく反映されていることが窺えます。二人はこの年の「クロスロード・ギター・フェスティバル」でもこの曲で共演しました。この勢い、まさに寝覚めの一発て感じです。 Moon Riverは前述の通り、クラプトンの思い出の一曲となったもので、ここでは何と言っても「ギターで歌う」ベックのパフォーマンスが最大の聴きものです。ロマンティシズムの極致とも言える甘~いトーンでのプレイ、これはベックにしかできないパフォーマンスです。オリジナルは、オードリー・ヘップバーン主演で大ヒットした61年の映画「ティファニーで朝食を」の主題歌でした。前曲といい、61年という年には青春期だった二人が観て、印象に残った映画だったのでしょう。懐かしいあの時代を思い出すだけで、青春期に帰っていける二人なのでしょうね。そしてHi Ho Silver Lining。当時、レッド・ツェッペリンに先駆けてボーカリストをフィーチャーしたヘビーなブルースロック4ピースバンドを結成したにもかかわらず、ベックをソロのポップスターとして売り出したかったプロデューサー、ミッキー・モストの策略に引っ掛かり、無理やりレコーディングされた67年の甘々のナンバーでした。長年に亘りベックはこの曲がトラウマになっていたようで、この曲に懲りて、以降は自身ではめったにボーカルを執らなくなってしまったほどでした。しかしここでは地元ロンドンのオーディエンスを前に、「自虐ネタ」としてこの曲を取り上げるほどに達観したベックでした。ファーストコーラスをクラプトンが歌い出すので、「えっ?やっぱりベックは歌うのは嫌なの?」と思わせるのですが、セカンドコーラスは照れながらご本人が担当します。このあたりが絶妙の展開です。日本ではここまでの和気藹々ムードは現出しませんでしたので、さすが二人の地元ロンドンは違うなあという印象です。 また、You Need LoveとLittle Brown Birdは、2007年に行なわれたロンドンのクラブ、ロニー・スコッツでのベックのギグにクラプトンが飛入り参加して共演した2曲です。どちらも二人好みのブルースで、二人のソロが聴かれます。元々クラプトンはベックからロニー・スコッツでの飛入りを打診された時、一旦は断ったそうです。しかしベックが「マディ・ウォータースのLittle Brown Birdでも演ろうと思ったんだけどなあ。」と振ると、クラプトンは、それなら、とOKしたそうです(ベックも攻めどころを心得ていますね)。そんな思い出のナンバーをここでも披露しています。 Wee Wee Babyは、83年の「ARMSコンサート」で共演した際にプレイしたブルースです。共演経験があったので、スムーズにセットインしたことが窺えます。(I Want To Take You) Higherは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの代表曲で、これはベックの好みだったのではないかと思われます。ボーカルを執らないベックは自由奔放にプレイしていますが、クラプトンは「ウーラカラカラカ」のボーカルがちょっと照れくさそうです(笑)。そんなこんなでとても楽しめる二人の単独セット&共演ステージ。二人も楽しんだ様子が窺える、歴史的共演を是非最高音質の本作でお楽しみください。