1939年生まれ、イタリアはトリエステ出身のジャズトランペッターで、イタリアンジャズシーンきっての著名としても知られるエンリコラーヴァの75年発となるソロ名義リーダー作。リリースはECMからで、本掲載版は同レーベルから2008年に再発された紙ジャケットヴァージョンのドイツ盤。音質も90年代の再発盤よりも解像度が抜群に上がったのも高ポイント。内容はソロ名義とはいえジャケットにも記載があるようにちゃんとしたジャズコンボによるアンサンブル作品で、編成はラルフタウナー、パットメセニー、テリエリプダルにも匹敵するECM系の売れっ子、ジョンアバークロンビー(エレクトリックギター)、ECM系の数多くのアルバムに重用されているパッレダニエルソン(コントラバス)、同じくこちらもECM系で知られるノルウェイ出身のジャズドラマー、ヨンクリステンセン(ドラムス)による布陣。内容は元来がコンテンポラリージャズやフリージャズ系統のイメージが強いエンリコラーヴァ作品としてはわりとジャズロックフィールドにも対応できる1枚で、というのも75年の前作がアガタウラコンファブとの共演によるプログレ筋にも知られるジャズロック作だったので、本作もこの余韻が醒めやらないと言わんばかりの内容。とはいえ流石にECMリリースなのでド直球ではなくて、基本はコンテンポラリージャズ由来の演奏法ではあるものの、それでも一旦ギアが入るとイアンカーのニュークリアスみたいな格好良さで醒めたまんま白熱していくアンサンブル。特にニュークリアスの頃のクリススペディングを極度に変態的にしたようなジョンアバークロンビーのエレクトリックギターは特筆もので、エンリコラーヴァのモードに揺さぶりをかけるようにコードがスケールアウトしてヘベレケな酩酊感でアンサンブルを異空間へと変転させていくなど、単なる炸裂型では無いジャズロックとしての裾野の広さを体感できる秀逸作。ENRICO RAVA-the pilgrim and the stars(ECM)