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hikariさん
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オービタルは「これこそが元祖エレクトロ」と帯に紹介されている通り、テクノないしはエレクトロの老舗です。老舗なのに何故間違う、と問われれば返す言葉もありませんが、ジ・オーブはもっと老舗ですから、とだけ言い訳しておきましょう。
このアルバムはオービタルの5作目にあたります。クラブ・ミュージック系の人々はアルバムに冷淡ですから、結成から10年で5枚のアルバムを制作したのは異例と言えば異例です。ただし、本作品と前作との間は3年もの月日がたっています。
クラブ・ミュージックの世界で3年と言えば、シーンが一変するほどの長さです。それでも彼らは堂々と我が道を行きます。解説で三田格氏は「まったく同じことを自信満々でやり直すことができたという内面の成熟なり、何かそういった類のことが横溢したアルバム」と評します。
小学生の通信簿のような人を傷つけない見事な言い方が微笑ましいです。「安直に言うとスケール・アップしたということだろう」。熱心なファンではない私ですら、恐らく変わってない人たちなんだろうということが分かるほどの堂々たるテクノっぷりです。
そうした印象は「僕たちはいま陽の光を浴びている。壁も陽気な黄色に塗り直したんだ。いままでは洞窟にいるみたいだったけど、心理的な影響が全然違うんだ」とハートノル兄弟の一人ポールが語る通りの自信に溢れた態度からもたらされます。
アシッド・ハウスのリバイバルやら何やらでめまぐるしく移り変わるシーンの中にあって、長らく活動を続け、次第にポピュラリティーを獲得、さまざまな映画に曲を提供するなど、スタイルを変えることなくシーンをはみ出す活躍をしていったことが大きな自信になったのでしょう。
「これから30代という新しい章が始まるんだ。エキサイティングだよ。5枚目のアルバムを聴いてごらん。ついにやったぜ、という感じだよ」と続く発言通り、本作品を聴いていると、ワクワクしてきます。大そう楽しい。プレステのゲームに一部使われたのも良く分かります。
ブックレットは、ピンボケ写真を15枚も掲載した写真集になっており、文字がまるでありません。この時期のエレクトロなサウンドは解像度だけは高いので、それとの対比でのピンボケか。やや時代を感じさせるコンセプトです。サウンドのレトロ感と同根です。
ザ・フォールのマーク・E・スミスはオービタルを好きだと言いつつ、「オービタルは上手い。だが、マシーンに走りすぎてる。感情に欠けてるんだよ」と評しています。「彼らはテクノロジーを駆使して、作品をもっとヘヴィーなものにするべきだよ」と。
マークの場合は育成コメントになりますが、私の場合はそこはオービタルの個性だと感じます。テクノロジーへの愛着が強くて、愛でるようにサウンドを操る。曲に表出する感情ではなく、そちらの愛情は満点。これはこれでテクノの真髄でもあるでしょう。
まず "WAY OUT " & "SPARE PARTS EXPRESS" の連作では、初期の頃の斬新さの中、2,3作前までに見られるもう一つの オービタルが見え隠れするのは、この 『MoN』 特有のグルーヴではないでしょうか。 打って変わってヘヴィなラインをカタチ取る "I DON'T KNOW YOU PEOPLE " 、そして壮大で美しく、後の 『 THE ALTOGETHER 』にその DNA を受け継ぐ "OTONO" 、ハイテンションで、キャッチー、それでいてどこかノスタルジック "NOTHING LEFT " から "STYLE" へと続く立ち振る舞いは、ハートノル・ブラザ-ズ の凄い所ですね。