2004年当時にはそうした状況が災いしてCD-Rのアイテムばかりがリリースされていたように記憶しています。数少ないプレスCDアイテムは3月21日のトロント・ギグを収録したRATLE SNAKEの「KOOL CAT PULLING OFF THE STRINGS」くらい。ところが同タイトルは当時の風潮を反映したイコライズ感の強い仕上がりであり、同レーベルの典型とも言える音作りでもあります。伝説のクラブ・ツアーからのリリースということでマニアには高い評価を受けたタイトルですが、今聴いてみればそのイコライズ感はかなりのもの。
この日は「High Water」ディランがエンジン全開となり、やたらとワイルドに歌っているのが最高。もちろん彼を支える演奏がまた最高にワイルドで、中でも「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」と「Joey」において、ディランと対決するかごとく強烈なリード・ギターをコエラが炸裂させています。この時期はレアなナンバーが積極的に演奏された時期としても人気があり、ここフィラデルフィアではゴスペル時代の「Saving Grace」が演奏されている点がポイントでしょう。おまけにここでドラムを叩いているのがヘイワードという点も聞き逃せない。
そしてボーナス・トラックにも強烈な演奏が詰まっています。ボブ・シーガーのカバー「Get Out Of Denver」は彼の地元デトロイトでのギグにおけるアンコールで披露されたものですが、超アッパーな演奏ぶりには誰もが唖然とさせられることでしょう。こんな強烈な演奏が2004年に披露されていた!そんなレアな演奏ですので「KOOL CAT PULLING OFF THE STRINGS」のボーナスにも演奏されていましたが、別音源を使用かつ今回の方が俄然ナチュラルな音質にて収録されています。
もう一つのボーナスはボストン公演からこのツアーを代表するレアで、しかも最高にロックな演奏である「Down Along The Cove」。これらボーナスも素晴らしい音質のオーディエンス録音であり、ようやく登場した2004年クラブ・ツアーの魅力を凝縮した世界中のマニア注目のリリースとなることでしょう。このツアーの終了と同時にフレディ・コエラが脱退してしまったので、なおさらこの時期の異様でハードなサウンドは今なお色褪せないもの。2004年にクラブでロックしていたディランとバンド、幻の時期の集大成!
Disc 1 (58:34)
1. Introduction
2. The Wicked Messenger
3. You Ain't Goin' Nowhere
4. Cry A While
5. She Belongs To Me
6. High Water (For Charley Patton)
7. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again