……と、このようになっています。RUND.M.C.の「King of Rock」のみ未放送だったために欠けていますが、他は当日演奏された全曲が記録されている(15枚組で欠けはこの1曲だけです)。もちろん、放送の関係でイントロやエンディングがなかったり、MCが被る曲もありますが、公式DVDでは丸ごとカットされたFOUR TOPSやビリー・オーシャンはだけでなく、全アーティストも最大限に聴ける。
LIVE AID - COMPLETE BBC FM BROADCAST: VOLUME 2(5CDR)
★0:29/JUDAS PRIEST(全3曲)
○0:40/ポール・ヤング(全4曲)
★1:01/ブライアン・アダムス(全4曲)
○1:19/U2(全2曲) ←【ココからDISC 2】
★1:39/THE BEACH BOYS(全5曲)
○2:00/DIRE STRAITS(全2曲)
★2:26/ジョージ・サラグッド(全3曲)※日本未放送 ←【ココからDISC 3】
○2:41/QUEEN(全6曲)
★3:05/SIMPLE MINDS(全3曲)
○3:23/デヴィッド・ボウイ(全4曲) ←【ココからDISC 4】
★3:41/PRETENDERS(全5曲)
○3:59/THE WHO(全4曲)
★4:21/SANTANA withパット・メセニー(全5曲) ←【ココからDISC 5】
○4:50/エルトン・ジョン(全6曲)
★4:57/ASHFORD & SIMPSON(全2曲)※日本未放送
エルトン・ジョンの「I'm Still Standing」「Can I Get a Witness」やジョージ・マイケルの絶唱が素晴らしい「Don't Let the Sun Go Down on Me」、マドンナの「Love Makes the World Go Round」、さらには丸ごとカットされていたSANTANA等々、公式DVDでは聴けなかったパフォーマンスがたっぷり。日本放送では知る由もなかったジョージ・サラグッド、ASHFORD & SIMPSON等々、全アーティストの全曲に触れられる。中継はグッと減るものの、それでも西ドイツのBAND FUR AFRIKA(2曲)やスタジオ収録のKOOL & THE GANG(2曲)も楽しめます。 そして、ここでのポイントはショウの充実ぶり。この時刻には英米ともショウが盛り上がっており、1アーティストごとに大洋を行き来しながら新旧のスター達が絶え間なく登場。英国ではU2、QUEEN、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン(&ジョージ・マイケル)等々、単独でもウェンブリー・スタジアム公演ができる超大物が並び、それに対抗するかのように米国でもブライアン・アダムスやTHE BEACH BOYS、PRETENDERS等が登場する。そんな中で意外な収穫なのがTHE WHO。ステージの現場で機材が整わずになかなか演奏が始められないだけでなく、ウェンブリーを中継していた飛行船の電源が落ちたらしく、とんでもない放送事故が巻き起こる。テレビ放送では米国スタジオを行ったり来たりしながらアナウンサーも大混乱で「あららら……」「ロンドンがどっか行っちゃった」「ではSANTANAを……」「あ、予定を変えてロンドンに」と大騒ぎになっていました。しかし、英国BBCのFM放送は違う。「My Generation」は豪快ノイズでぶっち切れますし、その後も音質的には今イチなものの、慌てるスタジオに切り替わるのではなく、そのままショウを放送。サウンドも徐々に改善していく事もあり、熱演ぶりをしっかりと楽しむ事もできるのです。
全20組のアーティスト達が中継もなく一気呵成に登場。日本放送されなかったトム・ペティやTHE CARSも美味しいですし、公式DVDでは丸ごとカットされたTHE POWER STATION、LED ZEPPELIN、CROSBY, STILLS, NASH & YOUNGもフル収録されている。一部で受信ノイズやテープヨレもあるので、音質まで最高峰とはいきませんでしたが、日本放送では絶望の淵に叩き込まれた「Stairway to Heaven」のイントロもシームレスで楽しめるのです。 もちろん、貴重なだけではありません。冒頭から『LIKE A VIRGIN』で時代の寵児となったばかりのマドンナやQUEENのフレディ&ブライアン、ポール・マッカートニーと畳みかけ。フレディ&ブライアンのスタッフが誤ってマイクを抜いてしまい、ポールの歌声がまったく聞こえないという歴史的な大事件もサウンドボードでたっぷり味わえる。トラブルは2分ほどで解決しますが、その間オフ気味な中で必死に歌うポールの声も、解決した瞬間の大喝采も超リアル。公式DVDでは後日オーバーダブされた歌声によって普通に歌っているようになっていますが、それではこの大喝采の意味は分からない。この感動は生放送だからこその醍醐味ですし、そんな感無量を受けたからこそ英国ハイライトとなるBAND AIDの「Do They Know It's Christmas」の大団円も一層胸に迫る。世紀の大イベントを長く長くフル体験できる本作だからこそのカタルシスなのです。
英国がハイライトを迎えてもまだまだ本作はディスク1。続くディスク2ではニール・ヤングのステージが聴きどころ。日本放送では終盤の2曲「Powderfinger」と未発表曲「Nothing Is Perfect」が中継されませんでしたが、ここではしっかり。カントリー路線の真っ最中ということから当時のバックバンド、THE INTERNATIONAL HARVESTERSを従えての大所帯ステージは世紀の一大イベントに打ってつけ。実際に胸のすくような演奏を聞かせてくれます。そして、再編LED ZEPPELINのディスク3に続くディスク4ではやはり再編したCSN&Yも登場。彼らもまた苦戦を強いられる。土壇場で決まった再結成はZEPと同じように注目を集めたものの、本番のステージは大苦戦。日本放送ではカットされた「Only Love Can Break Your Heart」が聴けるのは良いものの、モニターの返しがまるで効かない。大舞台の“LIVE AID”ではアコースティック勢がモニターで苦労していましたが、特に夜を迎えたJFKスタジアムは厳しかったようです。ラストのディスク5こそ、聴きどころの連続。ホール&オーツに続いて登場するミック・ジャガーのステージではジョン・オーツ、エディ・ケンドリックス、デヴィッド・ラフィンがコーラスに入り、「State Of Shock」「It's Only Rock And Roll」ではティナ・ターナーまで参加しての超豪華デュエットがサウンドボードで楽しめる。そして、トリを務めるのはボブ・ディラン。実はここも事件な聴きどころでして、JFKスタジアムでのトリにも関わらずモニターが絶不調。まだCSN&Yのようにエレアコを使えばマシだったかも知れませんが、アコギをマイクで拾わせるセッティングが完全に裏目に出てしまった。そこにきてキース・リチャーズとロニー・ウッドにもアコギを持たせた(彼らも生音を拾うモード)。悪いことは重なるもので、最後に披露された「Blowin' in the Wind」でキースにソロを振ったところでディランのギターの弦が切れる。そこでロニーが機転を効かせてギターを貸したまでは良かったものの、あいにくと彼のアコギはスライド用のオープンチューニング。自分の音がよく聞こえないディランはそれにも気づかず、音が外れたまま平気で弾いてしまう。そしてとどめはスタッフからディランのギターを受け取ったロニーは弦が切れたままの状態を見て頭を抱えながら演奏。本来なら感動のフィナーレとなるはずが、大惨事となってしまいました。