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ビルキス、あるいはシバの女王への旅（白水社）アリエット アルメル (著), 北原 ルミ (翻訳)
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本書のカバー全体を覆うのは、イタリア・ルネサンスの異才ピエロ・デッラ・フランチェスカの代表作、《聖十字架伝説》のひと＜シバの女王の聖木への礼拝とソロモン王との会見＞である。緻密に計算された構図、抑制の効いた透けるように美しい色彩、穏やかで品格のある登場人物たち......見る者を深い静けさで包むこの画家の作品には、熱狂的なファンも多い。
旧約聖書やコーランに登場する伝説のシバの女王(ビルキス)と、古代イスラエルの栄華を築いた賢王ソロモン。それを題材に傑作を描きあげた、初期ルネサンスの天才画家ピエロと彼を支える妻シルビア。本書は、このふたつの異なる時空間の二組の男女の愛の行方が、始めはさながらパラレルワールドのように、やがては複雑に絡み合い、ついにはひとつに溶け合っていくさまを、史実に基づきつつ、卓越した想像力を駆使してつづったフィクションである。ほぼ同時期に制作されたとされるピエロのもう一点の傑作＜出産の聖母＞もまた、物語の鍵を握る。
実在する絵画をめぐり、その奥行きと舞台裏を鮮やかに描き出す、美術ファン必読の一冊。