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勝利者だけが金も女も自由にできるのだ。汚らしくも人間的な業界に喰らいついた男。落ち目のプロダクションから独立を狙っていた東大卒の凄腕芸能プロ社員が見た日本の芸能界の暗部とは?
えみのか細い足首を持ち上げた。まばゆいほどの白い尻が、目に焼き付く。深見は、この世界には希な東大卒で凄腕の芸能プロ社員、松原えみは、所属タレントだ。広島の郵便貯金ホールで『松原えみショー』が開かれるわずか三日前だ。紅白歌合戦に今年も松原が出演することが決まったその日だった。深見はえみとの情事がらみで、落ち目のプロダクションからの独立を狙っていた。業界を暴く。
レビューより
フィクションであるが、実在の芸能人や当時の芸能プロをモデルにしているようだ。昭和の頃、テレビ界を支配し「帝国」とよばれた芸能プロダクションといえばWプロであり、姉弟で経営し弟が「おねえ言葉を使う」というのはJ事務所を想起させる。週刊誌の特集記者から作家に転向した大下英治には、先輩格である梶山李之の筆致の面影がある。ドライでスピード感があるのに、妙に粘っこい。そして「その時代の空気感」という者を色濃く反映している。バブル期前後の東京の姿が、生き生きと描かれている。登場人物の芸能人をあれこれ推測して読むのも面白い。
芸能界のタレント引く抜きを企てる男の物語、実在人物をモデルにしたような内容だがどこまで事実か、フィクションかはこの業界の人間にしかわからないが大下氏の作品ならかなりの部分は事実と推定できそうだ。ジャニーズ事務所などすぐわかるような記述も多い。あのアイドルがこんな目に、あんなことまでやらされてなど衝撃だ。
かつて栄華を極めていた著名人が登場し記述から推定できそうな人物は、山口百恵、西城秀樹、中森明菜、野口五郎などである。
講談社から出版されている「巨乳をビジネスにした男 野田義治の流儀」と内容が重なっているので、そちらも読まれるとより愉しめるかもしれません。(ただし「芸能ゴロ」の方が読み応えがあり、講談社の方は芸能界取材の処女作なのかやや説得力に欠けて草臥れるかもしれません。)