知る人ぞ知るハンガリー出身のスピリチュアル系バルカンジャズロックバンド、ドレッシュカルテットの2000年発となる通算9作目。リリースは地元ハンガリーの民族音楽系レーベルとして知られるFonoから3面綴じ込みブックレット付の特殊装丁見開き紙ジャケットにて限定プレス版だったもので、現在ではやや入手困難。因みにこのジャケットは表面も必見で、絵柄の部分にエンボス加工みたいな凹凸がかけてあるというスゴイ代物。編成はコントラバス、ドラムス、ヴァイオリン、サックスの4人編成にゲストでチンバロンのマエストロ、Ballazs Ungerが4曲曲にゲスト参加。上記メンバーのうちヴァイオリン奏者のフェレンクコバックスはチェンバーロックのコレクター筋に知られる2001年のソロアルバムが知られている程度で、他のメンバーは無名ながらいずれもハンガリーの現行ジャズシーンではそれなりの録音を残している辣腕揃い。内容がこれまた強烈で、序盤から繰り出される変拍子バルカンジャズロックビートに煽られながら吹き上がるドレッシュドゥーダスミハリーのサックス、これを受けてまるでマウロパガーニを彷彿とさせるエスノフォークロアなヴァイオリンソロがギスギスと迫るあたりでジャズロック好きは既にノックアウト状態。続いて開始される17分の大作ではハンガリアンジプシーの音律とリズムを用いてスピリチュアルジャズと折衷させた衝撃作とか、イタリアのグルッポフォルクインテルナツイオナーレをジャズ化したようなのまで、こんなヤバイのばっかりが詰まった本作、いまだに全貌が掴めないハンガリージャズシーンの、これが氷山の一角だったとしたら恐るべし。DRESCH QUARTET-riding the wind(fono)