岩本うしほのジュニア怪奇探偵小説『地下室の女神』（《中学一年コース》付録）
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岩本うしほのジュニア怪奇探偵小説『地下室の女神』（《中学一年コース》付録）
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学習研究社《中学一年コース》1964年3月号付録。2段組、96頁。両表紙の角に少ヨレ、表面にスレ・傷。裏表紙の中央寄りの部分に折れ。表紙・本文ともに経年のシミ・汚れがかなりあり。角ヨレ・角折れ頁あり。最終頁（奥付頁）の上端に値札のはがしあと。表紙絵・挿絵：岡野譲二
【内容紹介】
ぼく（物語の語り手）のおじさんの野木泰賢は法医学の権威で、最近の難解な殺人事件をはじめ、ここ二十五年間、凶悪な犯罪事件で手がけなかったものはなく、名探偵の名をほしいままにしている。そんなおじさんが、なぜかその日に限って一時間ほど約束に遅れてきて、そのおわびとして、とっておきの話を聞かせてくれる。それは、東京府の片いなかの古寺に生まれた泰賢が苦学生時代の夏休みに炊事のお手伝いとして参加した、柔道部の合宿で起きた出来事に関する物語で、二ヶ月前に地震のあったあと急にばけものが現れはじめたという、空き家になっているばけもの屋敷が合宿場に選ばれる。当初は、12名の柔道部員も泰賢も、ばけものたいじをしてやるくらいの意気ごみで、くだんの屋敷に乗りこんだものの、便所の下から、うめくような恐ろしい話し声が聞こえてきたり、畳の上を青い光が走ったり、庭の上空を青い火の玉（画像3参照）が乱れ飛んだりしているうちに、ひとりまたひとりと屋敷を逃げ出し、とうとう泰賢だけがあとに残される。すべての原因は床下に死体が埋まっていることにあると推理した泰賢は、死体を見つけるべく、床下を掘ってみるが、死体はいっこうに見つからない。そうこうするうち、隣家の洋館の地面の下に大きな空洞のあることを知った泰賢は、こっそり隣りの庭に侵入し、地面を掘り始める。すると、足もとから青い火の玉がヒュッと飛び、人間の骨のくさるような、異様なにおいが鼻をついてくる。死体の山があると思いきや、意外にも、六畳間ぐらいの地下室があり、目もさめるばかりの美しい顔をした若い女性が、金でかざったすばらしい寝台に横たわり、白髪の老人が枕もとに腰をおろして、その顔をじっと見つめていた（画像4参照）。数日後、なんとかして地下室の謎を解いてやろうと、泰賢は思いきって洋館を訪ね、そこの主人とおぼしき白髪の老人に地下室のようすを盗み見てしまったことを打ち明ける。それを聞いて最初は顔をこわばらせていた相手も、泰賢の目的がゆすりでないのを知り、自身と地下室の寝台に横たわっている妻とを巻きこんだ、世にも奇怪な海外での冒険譚を語り始める……
ぼく（物語の語り手）の物語のなかに警視庁づとめをしている名探偵のおじさんが中学時代に探索したおばけ屋敷の怪異にまつわる回想譚が入っており、さらにそのなかに地下室にいた老紳士の語った呪いにまつわる物語が入っているという、複雑な入れ子構造のジュニア長編で、そのうえさらに、探偵小説・怪奇小説・ホラー小説・冒険小説・秘境小説の要素を併せ持っているという、他にほとんど例を見ない異色作。最終盤の驚愕の展開のあとに待ち受ける、物語の導入部に呼応した物語の結びようもきわめて特異で、さぞかし当時の中学生読者たちもショックを受けたことだろう
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