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吉野葛・盲目物語/谷崎 潤一郎/古典への愛惜と母への思慕を人生の歌に変え叙述/源氏物語現代語訳、春琴抄へ繋がる中期の代表作/井上靖:解説
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史実と伝説が入りまじる、古(いにし)えの南朝の里に、母恋う狐の哀調を聞く(『吉野葛』)。落ち延びた座頭の心に刻まれた戦国の世の非情と、お市の方の悲しき生涯(『盲目物語』)。古典への愛惜と母への思慕を人生の歌に変え美しく奏でる、気力充実、谷崎中期の代表作。
巻末に用語、時代背景などについての詳細な注解、および作家・井上靖の解説を付す。
本書「解説」より
氏はこの作品(『吉野葛』)で、関西の風土への愛情と歴史への愛着、さらに又失われた古きものへの愛惜を、美しい抒情として描いている。随筆『陰翳礼讃』の中に見出す氏の〝愛惜すべきもの〟への熱情的詠歎が、ここでは静かな抒情となって流れているのである。そうした中へ友人津村の物語は巧みに嵌め込まれ、しみじみとした情感となって読む者の心に迫って来るのである。随筆的小説と言ってもいいし、逆に小説的随筆と言ってもいいかも知れぬ。
――井上靖(作家)
谷崎潤一郎(1886-1965)
東京・日本橋生れ。東大国文科中退。在学中より創作を始め、同人雑誌「新思潮」(第二次)を創刊。同誌に発表した「刺青」などの作品が高く評価され作家に。当初は西欧的なスタイルを好んだが、関東大震災を機に関西へ移り住んだこともあって、次第に純日本的なものへの指向を強め、伝統的な日本語による美しい文体を確立するに至る。1949(昭和24)年、文化勲章受章。主な作品に『痴人の愛』『春琴抄』『卍』『細雪』『陰翳礼讃』など。
- 出版社 : 新潮社; 改版
- 発売日 : 1951/8/10 初版 2010/9/25 第61刷
- 文庫 : 320ページ
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 1.2 cm
定価￥565