中でも「I'll Be Your Baby Tonight」のRTRバージョンを捉えたサウンドボードはこれが初登場。というのも大好評発売中の『NEW ORLEANS 1976 SOUNDBOARD』の時にはセトリから落とされてしまい聞くことができなかった。それだけでも大変に貴重な発掘となったのですが、この演奏が抜群にカッコイイ。75年とは打って変わってレイドバックした76年版RTRの魅力満載といってよく、こんなライブ映えするレパートリーがこの後すぐに演奏されなくなってしまっていたとは。
先に触れたモービルのサウンドボード最大の目玉とも言えた「I'll Be Your Baby Tonight」からしてイントロが欠損しており、そこにaudを緻密にパッチすることで演奏の完全収録を実現。これはディランのパートだけでなく他アーティストの個所でも徹底され、ロジャー・マッギンやジョーン・バエズのパートも最大限のaud補填を実現。その作業の過程でSBDに収録された二人の演奏の数曲がモービルではない別の日の演奏であることまで判明してしまったのですが、この辺りは今後の調査に期待したいところ。
そして極めつけはライブ終盤がごっそり抜け落ちてしまったパートもaudを活用することでディラン・ステージの完全収録を実現。さすがにSBDの足元にも及ばない音質ではありますが、実際「Lay Lady Lay」を聞いてもらえれば一目瞭然、周囲がまったくと言っていいほど騒いでいないので驚くほど聞きやすく、やはりライブが最後まで聞き通せるのは強い。
そしてPAサウンドボードならではの荒々しさを活かしたこの日のRTRの演奏がアツいアツい!ツアー後半に収録されたライブアルバム『HARD RAIN』を予見させる激しさが既に現れており、先の「I'll Be Your Baby Tonight」から「One Too Many Mornings」かけてだけを聞いてみても演奏の素晴らしさに圧倒されること請け合い。それに76年版「It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)」も実は珍しい。
その反面「Shelter From The Storm」と「I Threw It All Away」ではディランが弾く超へたっぴ(笑)なスライドギターの炸裂ぶり、まだレパートリーに投入されたばかりの「Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again」が当初はカリプソ風な雰囲気で演奏されていたりといった『HARD RAIN』とはまるで違う演奏もこれまたPAアウトならではの迫力と生々しさで捉えてくれているなど、新発掘サウンドボードとしての魅力が十分すぎる程に溢れている。