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支那派遣軍総司令官・岡村寧次大将/舩木繁/この日記は大正・昭和の陸軍史における重要な証言であり日本近代史にとっても貴重な資料
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口水張
昭和五九年八月
岡村大将は、終戦までほとんど中国関係に勤務し、大正初期の青島派遣や北京勤務、更に上海駐在、 後に満州事変、支那事変、 大東亜戦争では大陸戦場における幕僚副長や軍司令官となって、枢要なポ ストを歴任した。
中国関係者で、これだけの軍歴を持っている将軍は、外にはいない。
しかも、昭和初期の激動する時代に、陸軍省補任課長として、省部の中枢にあり、同志と共に部内 革新の原動力となって活躍したが、やがて国家改造運動に発展して深刻な派閥闘争となり、ついに血 を流す凄惨な事件に直面する。
中国問題と部内革新、更には国家改造という不可分の運動の核心に触れているこの日記は、まさに 大正・昭和の陸軍史における重要な証言であり、ひいては日本近代史にとっても貴重な資料である。 現在、各方面で昭和史について見直しが語られているが、「昭和は大正から続き」「満州事変はシベ リヤ出兵からはじまっている」と述懐した参謀次長沢田茂中将の回想を裏づけて、あらためて戦後史 観の一新に迫るものがある。
日記に登場してくる人物は、日中両国を通じて、軍人は勿論、政客あり、実業家あり、学者あり、 文化人あり、しかも女性ありで、まことに多彩である。
日記類をそのまま公刊することも考えられたが、それでは一部の人達の利用価値しかないし、人間 関係も判らない。
微力は承知の上で、勤務の合間を見て、日本や中国の資料を調べたり、両国の関係者に聞き書し、 日記類の内容をおって、岡村寧次その人を中心とした人間関係をときほぐしながら書くことにした。 簡明で的確、しかもウィットに富む日記をできるだけ本文に活かして、岡村寧次大将の人間像を浮 びあがらせると共に、その幅ひろい活動を通じて、大正・昭和の激動する時代に、やがて国勢を支配 してゆく陸軍の一つの姿を描くことができればと念じつつ筆をとった。
著者
1884‐1966(明治17‐昭和41)
陸軍軍人。東京都出身。陸軍士官学校(16期)，陸軍大学校卒。1921年ヨーロッパに出張，現地で永田鉄山，小畑敏四郎と接触し，以後，欧米列強の水準から立ち遅れた陸軍の近代化と総動員準備のため二葉会などの中堅将校集団を通じて軍改革をはかる。その後，関東軍参謀副長，35年参謀本部第2部長などを経て，38年第11軍司令官として漢口攻略戦に参加。41年大将に進み，44年支那派遣軍総司令官となり敗戦をむかえた。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第２版
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