山下達郎『TREASURES』 CD

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山下達郎『TREASURES』 CD

発売元 MOON records AMCM-4240

『TREASURES』(トレジャーズ)は、1995年11月13日に発売された山下達郎通算2作目のベスト・アルバム。

高気圧ガール
ムーン・レーベル移籍後初のアルバム『MELODIES』[注 3]からの先行シングル。イントロをアカペラとパーカッションで始めるというアイデアはずっと前からあったが、実際に試みたのはこの曲が最初だという。高気圧の溜息は竹内まりや[3]。

スプリンクラー
アルバム『MELODIES』[注 3]リリース直後にシングルのみでリリースされ、本作で初CD化となった。リリース当時は“夏男タツロー”らしくないと評判があまりよくなかったというが、詞・曲・演奏とも個人的にはとても気に入っていて、その後もライヴのレパートリーとして取り上げられている。演奏の途中で登場するエレキ大正琴は、歌に絡んで何か印象的な音が欲しくて選ばれた[3]。また、雨の音はスタジオに転がっていた太田裕美ライブ用素材テープの中の雨のSEが最高だったということでそのまま使われている。竹内まりやのシングル「恋の嵐」[注 5]でも、他になかなかいい素材がなかったために最後の雨のSEで同じものが使われた。このほか、元のマルチ・トラック・テープに色々と手を加えた山下本人曰く“むりやりのロング・ヴァージョン”が、後にベスト・アルバム『RARITIES』[注 1]に収録された。

ゲット・バック・イン・ラブ -Get Back In Love-
TBS系ドラマ『海岸物語 昔みたいに…』主題歌として制作、後にアルバム『僕の中の少年』[注 6]にイントロのコーラスが若干異なるアルバム・ミックスで収録された。ライヴ・アルバム『JOY』[注 7]には、ライヴ・ヴァージョンが収録されている。いつまでたっても周りから要求される“夏だ海だタツローだ”に苛立ち、「もうアップ・テンポでのシングル・リリースはイヤだ、バラードがやりたい!」とダダをこねていたら、スタッフがこの企画を持って来たという。自身でも納得の行く作品が生まれ、「RIDE ON TIME」[注 8]以来のベスト・テン・ヒットとなった。本作にはアルバム・ミックスで収録されている。
風の回廊(コリドー)
ホンダ・クイント インテグラのキャンペーン・ソングとして制作、後にアルバム『POCKET MUSIC』[注 9]に収録された。この曲で描かれている“過ぎ去った恋の中の現実とも幻影ともつかない女性像”は自身の詞の重要なテーマのひとつであるという。完成が遅れたためにスケジュールが遅延した結果、エンジニアの吉田保が次の仕事でハワイへ行ってしまい、生まれて初めて自分自身でミックス・ダウンを行う羽目になった。この曲は山下にとって初めてのデジタル・レコーディングであり、同時に初めてコンピューター・ミュージックを導入した、レコード制作上の一大分岐点でもあったという[3]。

アトムの子
アルバム『ARTISAN』[注 10]収録曲。後にシングル「JUVENILEのテーマ~瞳の中のRAINBOW~」[注 11]に1992年、シングル「僕らの夏の夢 ミューズ」[注 12]に2009年、それぞれのライヴ・ヴァージョンが収録された。山下曰く「漫画というカテゴリーをはるかに越えた巨人」であり、1989年に急逝した手塚治虫へのトリビュート・ソングを、鉄腕アトムをモチーフに書こうと思い立ったのがアルバム完成の10日前。どうしてもアルバムに収録したくて連日の徹夜で仕上げ、なんとか間に合わせたという[3]。

エンドレス・ゲーム -Endless Game-
TBS系ドラマ『誘惑』主題歌として制作、後にアルバム『ARTISAN』[注 10]に収録された。原作のあるドラマだったので、そのイメージに合わせて作ったところ、自身にとっては大変珍しいというマイナー・コードのメロディができた。ところがいつもの歌い方では演奏のオケにまったく馴染まず、うつむき加減で歌ってなんとか乗り切ったという。その意味では多分に作家的な視点で書かれた曲だとしている[3]。

踊ろよ、フィッシュ
シングルとしてリリースされ、後にアルバム『僕の中の少年』[注 6]にアルバム・ヴァージョンで収録された。「高気圧ガール」[注 13]以来4年ぶりの全日空沖縄キャンペーン・ソングとして制作されたがこの時期、自身が80年代初期に行っていたリゾート・ミュージックと言われるような開放的なスタイルのものにほとんど興味が持てなくなっていたという。それでも事務所スタッフから「タツローが夏をやらなくてどうする!」とハッパをかけられ、この仕事を引き受けたという。楽曲的には決して嫌いなわけではなかったが、自分の中に何かこだわりがあった為か、シングル・ヴァージョンは未CD化のままだった[3]。本作には最後にコーラスがリフレインしてブレイクする、正式にリリースされたものとは異なるシングル・ヴァージョンが収録されている。

ターナーの汽罐車 -Turner's Steamroller-
アルバム『ARTISAN』[注 10]からのシングル・カット曲だが、シングル・ヴァージョンはエンデイングにもヴォーカルが入っている。ある晩訪れたパブの、トイレに続く暗い廊下の影で。長い髪に黒いワンピースの女性が顔を覆ってすすり泣いているのを目撃した経験と、イギリスの画家ターナー(Joseph Mallord William Turner)の絵画『雨、蒸気、スピード』(Rain, Steam and Speed)のイメージとを強引に掛け合わせてできた一曲だという[3]。この曲は当初、普通のドラムとベースのリズム・セクションでレコーディングされたが、曲の持つ耽美的なイメージに近づけたいとの意向で、打ち込みのリズムに変更された。本作収録に際し、イントロのSEがカットされている。

土曜日の恋人
フジテレビ『オレたちひょうきん族』エンディングテーマ。ボビー・ヴィー(Bobby Vee)やゲイリー・ルイス(Gary Lewis and the Playboys)の諸作品に代表される1960年代のスナッフ・ギャレット(Snuff Garrett)の線を狙った曲で、楽曲的には気に入っていたものの、'85年のご時世にはあまりにアナクロな願望だったため、音作りにとても苦心したという[3]。今回も新たにミックスがやり直されているが、山下は「10年もたつのにまだいじり足りなくて、今回また新たにミックスをやり直してしまいました。ビョーキですね」[3]という。
ジャングル・スウィング -Jungle Swing-
初アルバム化作品。日産・スカイラインCMイメージソング。フル・ヴァージョンはCMサイズと歌詞が一部異なる。歌詞の“9thのコード”は、9代目スカイラインに因んでのもので、曲のイメージは黒澤明監督作品『野良犬』の中で笠置シズ子が「ジャングル・ブギー」を歌うシーンが元になっているという。山下はU2の「ディザイヤー」がリリースされた頃、ボ・ディドリーのビートを使った曲を作ってみようと思い立ったという。歌詞については「この頃はテクノ・ディスコみたいな音楽が流行り始めた時期だったので、“そんなフェイクなビートじゃとても踊れやしない”という歌詞を思いついて、代わりに何を聴かせてほしいかな? と考えたら、アーサー・コンリーだと思って、“スウィート・ソウル・ミュージック”にした」と語っている。

世界の果てまで
読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『ベストフレンド』主題歌として制作、シングルのみでリリースされた。「Endless Game」[注 14]同様、結果的に作家的な意思が強く出た、自身の作品としては異色なアプローチとなったという[3]。本アルバム収録に際し、リミックスされている。
おやすみロージー -Angel Babyへのオマージュ-
ライヴ・アルバム『JOY』[注 7]からの先行シングル曲。もともとは鈴木雅之1987年のアルバム『Radio Days』[注 15]のために書き下ろされた和製ドゥー・ワップ・ソングで、タイトルはロージー & ジ・オリジナルズ(Rosie & The Originals)1960年のヒット・シングル「ANGEL BABY」[注 16]から取られている。山下自身も気に入っている作品で、自身のライヴでもアカペラ仕立てにして取り上げていた。ライヴ・ヴァージョンはバック・トラックがテープのカラオケなので、本作収録に際しオーディオ的なグレードをもう少し上げたいとして、ライブでのリード・ヴォーカルをもとの演奏が入っているマルチ・トラック・テープにそのままプリントしてミックスし直された。

クリスマス・イブ
『MELODIES』[注 3]収録曲。バロック音楽でよく聞かれるコード進行なので、何かその風味を入れたいと考え、ふと思いついたテーマが“クリスマス”だった。その時、シュガー・ベイブ時代にトライして未完だった曲の歌い出し「雨は~」が突然よみがえり、歌詞はあっという間に出来たという。どうせなら間奏に本物のバロックを引用しようと、昔から大好きだったパッヘルベルのカノンが選ばれた。スウィングル・シンガーズ(The Swingle Singers)のスタイルを一人アカペラでやろうというので、8小節のレコーディングに半日費やされた。エンディングのコーラスが一転してアソシエイション(The Association)風のアプローチなのは、オフコースへの対抗意識から出たアイデアだという。シングルには地味だとは言え、せっかく作ったクリスマス・ソングなので、毎年末に季節限定商品としてピクチャー・レコード、カラー・ビニール、ピクチャー・レーベルと、趣向を変えてリリースされ続けた。それが、'88年から4年にわたってJR東海のクリスマス・キャンペーンに使用されたことでブレイク、毎年チャートのベスト・テンにランクされるようになり、'89年暮れにはナンバー・ワンとなった[3]。

さよなら夏の日
『ARTISAN』[注 10]からの先行シングル。夏の終わりにガール・フレンドと遊園地のプールに行った時に夕立に会い、雨上がりの虹を見たという高校生の時の思い出を元に作った曲ゆえ、とても愛着のある作品だという。また、全ての演奏を自分一人で行った初めてのシングルだという事も、思い入れの強さの一因だとしている[3]。カウンター・ラインを、当時購入したばかりのハンドベルで演奏している。
蒼氓(そうぼう)
本ベスト・アルバム中唯一シングル・カットされていない作品で、『僕の中の少年』[注 6]収録曲。この十数年間に書いた曲の中で自身の思想信条を最もよく表している曲なので、一人でも多くの人に聴いてもらえたらと思い収録したという[3]。山下は「僕は日本人だし、クリスチャンでもない。けれど、音楽的・文化的な面でのアメリカの植民地である日本で半世紀近く、その音楽に慣れ親しみ、やり続けてきた日本人として、アメリカのブラックミュージックのクリスチャニティを何らかの形で反映させたいと思ってきた。どうしたらそれができるか? その1つの問いかけがこのなんだよね」と語っている。また、曲制作の直接の動機について「現象としてのYMOの出現」を挙げ、その音楽的背景よりも人文科学や社会科学の潮流だったニュー・アカデミズムの台頭など、YMOを取り巻く文化人的側面から日本のポピュラー音楽の在り方が変容させられるのでは、との危機感や恐怖感を強く抱いていたいう。そうした理由から、“無名性、匿名性への賛歌“であると同時に、もう1つのテーマとして“反文化人音楽”というフレーズが用いられている。コーダのコーラスには、竹内まりや、桑田佳祐・原由子夫妻が参加しているが、山下は「桑田夫妻の無垢な声の響きが、この作品に格調を与えてくれている」[3]という。本作収録に際し、リミックスされている。

パレード
山下曰く“ちょっとした「おまけ」”として収録。ナイアガラ・トライアングル(大滝詠一、伊藤銀次、山下)のオムニバス・アルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』[注 17]に収録されている、もとはシュガー・ベイブ時代のレパートリー。1994年にフジテレビ系『ポンキッキーズ』のエンディングテーマに使用されたことから、20年の時を経てシングルカットされた[注 18]。このアルバムのために大瀧が新たにミックス・ダウンを行った、ニュー・リミックス・ヴァージョン。

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