そのクオリティがどれほど凄まじいのか。それは同じ“SUPER ROCK ’84”でヘッドライナーを分け合ったWHITESNAKEでも証明されました。以前、本作と同じようにWHITESNAKEの日本盤レーザーディスクから復刻させた「SUPER ROCK '84 IN JAPAN 30TH ANNIVERSARY EDITION」がリリースされたのですが、それからしばらくしてオフィシャルでもオリジナルの1インチマスターを発掘し、「LIVE IN 1984」として作品化したのです。もちろん、製品化以前のオリジナルマスターなのですから、レーザーディスクよりも遙かに高画質……のはずが、なんと「SUPER ROCK '84 IN JAPAN 30TH ANNIVERSARY EDITION」とほとんど変わらぬクオリティだったのです。つまり、本シリーズのクオリティは、オリジナルマスターの持っている情報量をほとんど総てを再現しきっていた。待望の公式化のハズが、本シリーズの究極品質ぶりを浮き彫りにしてしまったのです。
映像だけではありません。“SUPER ROCK ’84”のオフィシャル諸作は「史上初のリニアPCM録音」をウリとしていましたが、当時のVHSや民生機レーザーディスクではほとんど意味をなさず、無駄にオーバー・スペックな音声でした。それから30年、すでに撮影マスターは失われてしまいましたが、最上級にDVD化した本作によって、やっと真の実力が発揮されたのです!
そんな“SUPER ROCK ’84”復刻のM.S.G.編、それが本作です。デイヴィッド・カヴァデールとは違い、マイケル・シェンカーはアーカイヴにはまったく無頓着で、恐らくこの作品が公式で蘇ることはないでしょう。仮に、幸運にも公式化にこぎ着けたとしても、WHITESNAKEと同様に同等のクオリティが精一杯のはず。つまり、本作こそが史上最高クオリティに間違いありません!
そんな究極クオリティで蘇った1984年夏のM.S.G.。このイベントは、日本のHR/HMファンにとってはマイルストーンとも言うべき一大イベントだったわけですが、その中でもM.S.G.は、最大級のインパクトでした。その要は、何と言ってもレイ・ケネディです。当時、ゲイリー・バーデンとクリス・グレンが脱退し、事実上の解散状態だったM.S.G.。目の前に迫ったSUPER ROCK ’84を乗り切るため、マネジメントによって紹介されたAOR畑のレイが加入したわけですが、初リハーサルが公演初日の当日だったというのですから、そのパフォーマンスは空前絶後。言葉にするのも難しいあの衣装、あのアクション、そして「何か」を見つめるような真剣な眼差しや即興で変わっていく歌詞やメロディ……もはや伝説とさえなっている光景が、額の汗の1粒まで鮮明に観られるのです。
そして「Lost Horizons」「I'm Gonna Make You Mine」でレイが戻ってきて、せっかくの感動が台無し……かと思いきや、ここでは楽曲と意外な相性を聴かせるパフォーマンスを披露。特に「I'm Gonna Make You Mine」は、明らかに差し替えられていますが、その分、キッチリと高音も響かせる安定した歌唱は見事。このままレイがM.S.G.に留まり、新たなスタジオ・アルバムを作っていたら……と想像の翼が広がる1曲です。
このライヴの後、マイケルは長い沈黙を経てMcAULEY SHENKER GROUPを結成します。後年の再始動ではなく、1979年の誕生から命脈を繋いだ“THE MICHAEL SCHENKER GROUP”。本作は、その最後の一夜なのです。