ジャニス・ジョプリンはブルースを自分のものにした。1970年にヘロインの過剰摂取で亡くなったジョプリンは生きてこのアルバムを完成させることができなかったが、彼女の激しい情熱、苦悩とエクスタシーの入り混じった極限の叫びは迫力充分。お陰で本作は、彼女の時代のもっとも忘れがたいレコードになった。インスト曲「Buried Alive in the Blues」ではバンドも活躍するが、リリース後何十年も経っている本作を今なお聴きがいのあるものにしているのはヴォーカルである。傷心の苦しみを歌い上げた「Cry Baby」や、希望に満ちた言葉をつづったクリス・クリストファーソンの「Me & Bobby McGee」を聴けば、なぜ悲劇の人とも呼ばれるジョプリンがポップ界に欠かせない存在なのか理解できるだろう。