嘉永・慶應江戸切絵図・日本地図選集/本書は両絵図の中から独自の絵図としての尾張屋板を選び原図をそのままの寸法と色彩に復元した
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年度不明 厚さ約5.5cm 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。
江戸時代に数多く出板された地図のうち、切絵図といわれ、江戸市街を地域別ににした分割図の数は少ない。その最盛期をみたのは、幕末の慶應年
間であるが、遡っては文政六年(一 八二三)刊の安見御江戸縮図・須原屋板十七図と宝暦五年(一七五五)刊の板を数えるだけである。 寛文五枚図とよばれ貴重視される、寛文十年(一六六五)刊の新板江戸大 絵図・経師屋加兵衛板は、切図ではあるが、江戸市街の全域が、縮尺三・二 五〇分の一で測図され、出板に当って、便宜上分割されたものであった。
初期の切絵図は地域の発達や複雑な処を、必要に応じて作られたが、首尾 の完備したものといえば、嘉永年間に大成した、尾張屋板の三十一図と、近 吾堂板の三十五図を挙げるのみである。この期間に二、三の板元からも出板 されたが、続刊をみていない。
刊行は近吾堂板が一年早く、嘉永元年(一八四五)で、尾張屋板は翌二年 からであったが、両板元の所在地が、同じ麹町で遠くなかったところから、 互に競ったかたちとなって新板を刊行し、その間には、市中の変動、改廃に
に従ってこれは慶應の初年まで続けられた。 近吾堂板の図法は、吉文字屋板を根拠として、道路が黄色に、池川は水色 に彩られてある。
本書は両絵図の中から、独自の絵図としての尾張屋板を選び、原図をその ままの寸法と色彩に復元したが、絵図であるから方位地形、里程や道路の広 狭など、正度を実測図に比べて求めることはできない。ーとは今日 から会えるのであって、図中に絵画を配し、多色摺としたこの絵図は、錦絵
である を形出した実用品と、人気をよんだのである。 「上野の如く桜咲く処には自由に桜の花を描き柳原の如く柳ある処に 糸を添へ得るのみならず、又飛鳥山より遠く日光筑波の山々を見ることを得 れば直ちにこれを雲の彼方に描示すが如く、臨機応変に全く相反せる製図の 方式態度を併用して興味津々」と日和下駄の一節に、永井荷風散人が書きと めるように、大正のはじめ頃でも、愛用者はいたのである。 この文は、目次の三十の向島、五の神田浜町、二十八の巣鴨の三図を云っ
たものだが、各葉の原形は、縦一六・五m、横九mの統一した大きさに折畳 まれ、表裏に厚紙を当て、表の中央に題を貼り、紙に入れて売出された。 値は一折百廿四文であったという。各図の題は本書が見出扉に用いたもの
である。
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