90年代のR&Bシーンは,New Jack SwingをはじめHip-Hopの影響を多分に受けたストリートなサウンドや,ネオ・ソウル等と呼ばれるオーガニックなサウンドが台頭する一方で,メロウでスムースな楽曲を得意としたシンガーソングライターを多数輩出した時期だったとも思うのです。ドネル・ジョーンズ,ジョー,エリック・ベネイ,ケニー・ラティモア,ジェシー・パウエル・・・そんなアーティスト達の一角にいたのが,この人,キーノ・ワトソン。 が,ジョーやエリック・ベネイが今も一線で活躍を続けている中で,キーノ・ワトソンが脚光を浴びたのは短い期間にとどまり,今では忘れられた存在となりつつあるのが残念です。 本作は,96年にリリースされたデビュー作。 チープながらも感傷的なフレーズをループした甘美なスロー・ジャム「Intro...It's Time」でアルバムは幕を開けます。「Game Recognize Game (Whatcha Want)」は,ブルーなメロディーでクールにステップを踏むミッドテンポ。エモーショナルな歌声にディープなコーラスもイカした渋いナンバーです。 ただ,素晴らしいのはここから。 「Got Me Open」は,ロマンティックで思わずうっとりしてしまうメロディーでスムースに流れるアップテンポ。流麗なピアノや小粋なサックスも取り入れたお洒落なサウンドが夢見心地です。「I'm the Man (Your Mama Been Warnin' You About)」は,切ないほど透明感のあるピュアなメロディーが胸に染みるバラード。ファルセットを交えた優しいコーラスもイイですね。雨をバックに歌い上げられる「Cry No More (I'll Be There 4 U)」は,アコースティック・ギターの優しい調べと,しみじみとした歌声が心温まるバラード。この3曲が秀逸です。 後半に入って「Bring It On」。何とも心地良いミッドテンポですね。休日の昼下がりのようにのどかで寛いだサウンドに心安らぎます。日本盤では,この曲の別テイクがエンディングに収録されています。こちらは,何と! Delegationの「Oh Honey」を大ネタ使いしています。これがまた見事にハマっていて,思わずまどろんでしまいそうなぐらい心地良いんです。 レイトナイトを思わせる冷ややかなピアノに密やかなサウンドのミッドテンポ「Down 4 Mine」,官能的なまでに甘美なスロー・ジャム「The Best Things in Life Are Free」もなかなか良いんですが,終盤にはもう1曲佳曲が。ハープが奏でる美しくも悲しいメロディーが印象的な「Definition of Love」です。切々と歌い上げる哀しい歌声も胸に染みます。 どうして,こんな佳曲ぞろいのアルバムをリリースしながら,ブレイクに至らなかったのが今思えば不思議ですが,この2年後にマイナー・レーベルからセカンド・アルバムを出した以降,彼の作品を見かけることがなくなってしまいました。 それでも,本作の魅力は色褪せていません。90年代R&Bが再評価されている今,もう一度脚光を浴びても良い作品だと思います。
TRUE 2 THE GAME
が,ジョーやエリック・ベネイが今も一線で活躍を続けている中で,キーノ・ワトソンが脚光を浴びたのは短い期間にとどまり,今では忘れられた存在となりつつあるのが残念です。
本作は,96年にリリースされたデビュー作。
チープながらも感傷的なフレーズをループした甘美なスロー・ジャム「Intro...It's Time」でアルバムは幕を開けます。「Game Recognize Game (Whatcha Want)」は,ブルーなメロディーでクールにステップを踏むミッドテンポ。エモーショナルな歌声にディープなコーラスもイカした渋いナンバーです。
ただ,素晴らしいのはここから。
「Got Me Open」は,ロマンティックで思わずうっとりしてしまうメロディーでスムースに流れるアップテンポ。流麗なピアノや小粋なサックスも取り入れたお洒落なサウンドが夢見心地です。「I'm the Man (Your Mama Been Warnin' You About)」は,切ないほど透明感のあるピュアなメロディーが胸に染みるバラード。ファルセットを交えた優しいコーラスもイイですね。雨をバックに歌い上げられる「Cry No More (I'll Be There 4 U)」は,アコースティック・ギターの優しい調べと,しみじみとした歌声が心温まるバラード。この3曲が秀逸です。
後半に入って「Bring It On」。何とも心地良いミッドテンポですね。休日の昼下がりのようにのどかで寛いだサウンドに心安らぎます。日本盤では,この曲の別テイクがエンディングに収録されています。こちらは,何と! Delegationの「Oh Honey」を大ネタ使いしています。これがまた見事にハマっていて,思わずまどろんでしまいそうなぐらい心地良いんです。
レイトナイトを思わせる冷ややかなピアノに密やかなサウンドのミッドテンポ「Down 4 Mine」,官能的なまでに甘美なスロー・ジャム「The Best Things in Life Are Free」もなかなか良いんですが,終盤にはもう1曲佳曲が。ハープが奏でる美しくも悲しいメロディーが印象的な「Definition of Love」です。切々と歌い上げる哀しい歌声も胸に染みます。
どうして,こんな佳曲ぞろいのアルバムをリリースしながら,ブレイクに至らなかったのが今思えば不思議ですが,この2年後にマイナー・レーベルからセカンド・アルバムを出した以降,彼の作品を見かけることがなくなってしまいました。
それでも,本作の魅力は色褪せていません。90年代R&Bが再評価されている今,もう一度脚光を浴びても良い作品だと思います。