さらに驚かされるのは収録がコンサートだけでなく、サウンドチェックからばっちり収録されているというドキュメント性の高さ。まずシドニー初日に関してはポール登場前、文字通りサウンドチェックの場面から捉えられているという生々しさにも驚かされるでしょう。「I’ve Got A Feeling」バーチャルデュエット機能のチェックなど、本来なら垣間見られない場面を最高の音質で聞けてしまうのだから。
ポールが登場すると、これまでのサウンドチェックと同じようにインストゥルメンタルのジャムで彼とバンドが肩慣らし。ここではリフを主体としたジャムでポールがリードギターを弾く様子も克明に記録されています。「Honey Don’t」以降はおなじみサウンドチェック用レパートリーが続きますが、注目すべきは最新作『McCARTNEY III』から「Find My Way」と「Women And Wives」の二曲が披露されていることでしょう。既にサウンドチェックでこれらが披露されている事は報じられていましたが、それが実際に、しかもこれほどの音質で聞けるとは。どちらもライブ本編で演奏されることは叶わないでしょうからなおさらというもの。
また完全にサウンドチェック用と化した「Coming Up」に「From Me to You」といった曲が聞けるのも実に楽しい。こうした貴重なレパートリーもステレオの最高音質でじっくりと楽しんでください。
何より本ツアーの目玉レパートリーである「She's A Woman」もばっちり。2023年のポールがこの曲を再び取り上げたというだけでも世界中のマニアが驚かされた訳ですが、81歳のポールがそれをしっかり歌い上げてくれる様子は感動モノ。バックバンドの演奏もいい。今回の目玉ということでオーディエンス録音や動画の演奏シーンでもありがたく見聞きしてきたものですが、遂にステレオ・サウンドボード感覚で同曲を楽しめるようになりました。