80年代に南米メキシコから出現したシンフォニックロック系アシッドフォークとトリップ音響の混合体、ニルガールヴァリスのデビュー作。オリジナルLP盤はアルトウーロメザの自主レーベルと思しきGente De Mexicoから84年に少数プレスでリリースされていたもので、この当時、日本ではキングレコードのユーロピアンロックコレクションの全盛期に加えて南米プログレ系作品の掘り起こしブームの渦中にあって、そのタイミングに乗じて運よく新譜として輸入盤店に入荷していたという懐かしい記憶のある1枚。で、そのオリジナルLP盤の本当のタイトルは Nirgal Vallis Arturo Meza And Maja Rustige- y murio la tarde in prncipio... って事で正式にはニルガールヴァリスとアルトゥーロメザによるスプリットアルバムだったもの。で、本掲載版は95年になってようやく正規再発されたmusea盤CDで、この当時、マニア筋は喜び勇んだもののタイトルが縮んでアルトゥールメザの名前がカット。アレ?って事で調べてみれば要するに今度はニルガールヴァリスの単体アルバムとして出直し再発というコンセプトのもと、LP盤ではB面全てを占めていたアルトゥーロメザの大作をカットして、替わりにニルガールヴァリスの貴重な未発トラックを加えて全8トラック48分へと拡大エクスパンディット完全版として結実したという次第。因みに本作、現在ではムゼアの南米プログレ系再発アイテムとしてはけっこう入手困難な1枚となっていてdiscogsでもそこそこのプレミアム流通。編成は女性ヴォーカリストのクラウディアマルティネスを中心に12弦ギター、フェンダーローズ、ピアノ、ヴァイオリン、リコーダー、マンドリン、シンセ、カリンバ、パーカッション他多数のインストゥルメントを4人の奏者が操る布陣。いずれの奏者もこの当時のメキシコプログレシーンとの絡みが確認できない無名奏者ばかり。内容は上手く形容できないほど独得の響きがあって、恐らくはシンフォニックロック的なるものを目指してはみたものの、コンポジション面でも演奏面でも技量不足が災いして思い描いたようには行かずにあらぬ方向へと向いてしまい、結果的にはこれが功を奏してサイケデリックな心象風景を喚起させるような音響テクスチャーを孕んだプロトシンフォニックロックとでもいうべきサウンドとして変容。このヘベレケな千鳥足ヴァイオリンに纏わりついてグニャグニャした感じのアンサンブルの妙と儚くも陶酔したメロディックな感じはなんとなくフランスのワパスーを思わせたりもする珍作。NIRGAL VALLIS-y murio la tarde(musea)