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川口鼈甲店さん
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商品をご覧いただきありがとうございます。わたくしどものお店の創業は明治14年(1881年)でございます。創業から数えて139年になります。当店は長崎市浜町で鼈甲製品の専門店として営業させて頂いてまいりました。2001年に4代目店主であるわたくしが過労で倒れ意識が戻ったときには腎臓が壊れてしまっていて人工透析を導入されていましたので気力・体力の充実を図れなくなった自分にはお店の維持は無理であると判断して鼈甲の専門店を閉店致しました。クレジットカード会社.日本ダイナースクラブ勤務で退職後に東京から軽井沢へ移住した友人から”天井のないホスピタル”といわれている信州浅間高原の小さな田舎町での転地療養を勧められ2002年に長野県北佐久郡軽井沢町に転居体調の好転に伴い 夏の間だけ避暑地軽井沢の老舗ホテルで“Nagasaki Presents.長崎からの贈り物”というコンセプトで小さな展示会をさせて頂いてまいりました。しかし年齢とともに会場の設営や撤去が体力的に厳しくなってまいりましたので2006年をもってお客様への対面販売を終了致しました。1994年にワシントン条約で鼈甲の原材料である玳瑁(タイマイ)亀の輸入が禁止されてしまいました。玳瑁はすべて赤道直下の国々からの輸入品です。そのため鼈甲職人が備蓄しております玳瑁を使いきってしまったところでそう遠くない将来 鼈甲は日本国内の店頭から姿を消してしまう希少価値のある逸品です。わたくしごとですがわたくしどもには子供がいませんので 当店はわたくしの代で鼈甲販売を終了致します。4代続いた川口鼈甲店としての終焉を迎えるにあたりこのままわたくしが商品を保管し続けておしまいにすることは良くないのではないかと思うようになりました。それで手元にございます商品をわたくしどもが考えております製造原価プラスαという価格設定でYahoo!ショッピングや楽天市場で販売させて頂くことではなくて鼈甲のアクセサリーを末永くご愛用していただける方々がご納得して頂けるお値段でお買い上げくださることが良いのではないかという主旨で安価なお値段でYahoo!オークションに出品させて頂くことに致しました。1990年.銅版画家の山本容子さんに包装紙の原画をお願いしました。「鼈甲は単一の色彩ではなくていくつもの模様が幾重にも重なり合っていて宙に浮いているような不思議な柄の重なりと透明感があるこの立体感は絵の具と筆でカンバスに描くことはできない写真に写し込むこともできない手にとって翳したときに見えてくるそれが鼈甲の魅力だと思う」と言われました。1998年.作家の永六輔氏が長崎でわたくしどもの鼈甲製品をご覧になったときの第一声は「僕が知っている鼈甲はこんなに綺麗ではなかった 鼈甲って こんなに綺麗なんだ こんなに綺麗なものをつくれる技術を 輸入禁止にしておしまいにするのはおかしい. 間違ってる 今日 川口さんを訪ねて 長崎に来てよかった 鼈甲 大事にしましょう」でした。”べっ甲の色は海が育てた生命(いのち)の色です”というコピーを後日お手紙でいただきました。TBS.NHK.毎日新聞.週刊朝日のコラム.講演会, そしてご自分の著書を介して鼈甲のことを発信してくださいました。 医師や弁護士・上場企業の管理職の方々にしかカードを発行しないという高級志向を貫いていた頃のクレジットカード会社の元祖 日本ダイナースクラブで高級路線のイメージ戦略を担っていた広報の松井久氏と親しくお付き合いをさせて頂いていました。わたくしより15歳年上の方でした。お会いする度に厳しく叱咤激励を浴びせてくださいました。若い頃のわたくしにとってはすべてを見透かされている怖い存在で緊張の連続でした。「君は自分のことを素朴な田舎者だと思っているだろう。 でも それは間違っている。 君は上品さや教養を持ち合わせていない粗野な田舎者なんだ。 高価な鼈甲のアクセサリーを販売するお店の店主になりたいのであれば 教養を身につけなければいけない。 美しいもの 素晴らしいものを自分の目で見て知ることからはじめなければいけない」という口調でした。その松井氏との酒席でひとつだけお褒めの言葉を頂いたことがあります。「君のお店に飾ってある鯛の菓子入れ 君のおじいさんが昭和天皇にご覧いただくためにつくったもの つくりての魂を感じる 海を泳いでいる鯛が神様の力で一瞬にして鼈甲になった ギリシャ神話に出てくる 神様の魔法で人が石になってしまう そういう物語を連想してしまう不思議な力を感じる。 花鳥風月の美しさを小さな世界のなかに忠実に描写する 工芸技術という世界の奥の深さを僕は初めて知った」1969年(昭和44年) 長崎国体御出席のためご来県される昭和天皇の当店へのお立ち寄りというお話を大正時代から宮内省各宮家へのお出入りを許されていたという繋がりで 宮内庁から長崎県庁を経由して直々にいただいたとき祖父は悩み抜いた末に「陛下を長崎浜町商店街のなかにお招きするということは 警備のためにアーケード街一帯を一日閉鎖することになる。 そうなると商店街の店々に多大な迷惑をかけてしまう。 百貨店2軒を含めて150店すべてのお店の一日の売上を迷惑料として保証する余力はない」という理由で辞退したのだそうです。そういう経緯がございましたので 昭和天皇は江崎べっ甲店へお立ち寄りになられました。その代わりに長崎県庁の応接室で陛下にご覧いただくための置物 「鯛の菓子入れ」 をおつくりしました。この事実は祖父が同業者のなかでいちばん親交の深かった垣立忠雄氏から祖父の忌明け法要の酒席で伺いました。「当時 君のおじいさんは お酒の席で寂しそうな顔をして 『ほんとうは陛下にいらしていただきたかった。 でも 自分の名誉と周りの人達への迷惑を天秤にかけたとき どうしてもできなかった。 苦渋の決断だった … 』 と呟いていた。 いまの若い人たちにはわからないと思うけど 僕や君のおじいさんが若い頃は 家の仏壇や神棚に天皇陛下の御写真が飾ってあって その御写真に向かって毎朝礼拝していた。 天皇陛下は神様だった」後日 祖父は皇居で昭和天皇とご拝謁 数分間お話をさせていただくという名誉を賜わりました。会話の最後に「健康で永く生きて 素晴らしい鼈甲をつくり 後世に遺してくれることを 朕は希望します。お元気で … 」という御言葉を賜わったそうです。祖父は無口で一日じゅううほとんど口を利かない人でしたが晩酌のときには別人のように饒舌になり 多種多彩な話題について広く深く語っていました。しかしこの一連の出来事をわたくしには一言も口にしませんでした。後日)祖母から「陛下とのお約束があるから元気にならなければ。 陛下より若い自分が陛下よりさきに逝くわけにはいかない」と亡くなる前日まで自分を奮い立たせるように小さな声で言っていたことを聞かされました。商品をおつくりするとき一切の妥協を許さない という他を寄せ付けない厳しい眼光の奥には陛下との御約束を守らなければいけないという信念があったのだろうと思います。劣勢な状況下で最後尾の箇所を担う大役を 殿 (しんがり) といいます。わたくしに務まることではないということを踏まえつつ一人でも多くの方々に接着剤ではなくて水と熱と圧力を駆使しておつくりした鼈甲に触れていただきたいという思いで商品をご紹介させていただいております。営業許可免許特定国際種事業者(象牙・タイマイ類等販売免許) 事業者番号 B-196 川口鼈甲店ホームページ http://kawaguchi-bekkou.sakura.ne.jp/index.html出品商品archives https://www.instagram.com/kawaguchi.bekkou/?hl=jaYou Tube https://www.youtube.com/channel/UC56UuculrUJfksXl-6fhPyA/videos珊瑚 ペンダント縦 約3.2センチ(最大部・冠含む)横 約2.5センチ(最大部)厚さ 約6ミリ(最厚部)冠 枠 K18春らしく温かで柔らかな色彩の天然の珊瑚ペンダントでございます。イタリアサルジニア島近海で採れるサルジと呼ばれる種類のサンゴです。オーソドックスな雫型でムラがなくボリュームのある厚い珊瑚に繊細な細工を施したK18の枠を巻いています。明るさと華やかさが加わり宝飾品のペンダントとして完成しているかと存じます。裏に白い斑と傷がありますがこれが無染色・天然の証 でございます。春の明るいお色のお召し物はもちろん初夏になりましたら素肌にもおつけいただけます。サルジのオレンジに近いこのお色はお肌に馴染みやすい色でございます。現在K18はお値段の高騰が続いておりますが長崎市浜町アーケード街・浜屋百貨店そばでべっ甲の専門店をさせていただいていた頃の店頭での販売価格を提示させていただいています。現在 このデザインの珊瑚ペンダントが珊瑚専門店ではどれくらいの価格で販売されているのかを調べるためネットで検索してみましたが1点しか見つかりませんでした。1990年代 わたくしが長崎で珊瑚製品を商っていました頃長年にわたりお取引をさせていただいていた神戸珊瑚株式会社の方は「きれいな珊瑚は採りつくされてきたから そう遠くない将来良い珊瑚は手に入らなくなってしまう」と話していました。このグレードのペンダント希少なものになっているかと思われます。日本国内のべっ甲専門店や宝飾品店の店頭にはおそらく並んでいないであろうと思われる鼈甲製品を「特上品」 「頂上品」 という定義付けをして定価の4割引に近いお値段で出品させていただいてきました。そして 3点に1点ぐらいのペースで落札していただいてまいりました。そういう経緯を踏まえて 希少価値のある珊瑚製品を数点 「特上品」 という扱いにして出品いたしました。多くの方々に閲覧していただきました。しかし ウォッチリストへの登録はほんの数名でした。入札に参加される方はいらっしゃいませんでした。この結果をどういうふうに捉えていけばいいのか 考えました。鼈甲製品は 絶対に他では手にはいらないということを前提にお買い求めいただいていた珊瑚製品は日本じゅうの珊瑚専門店や宝飾品店を見て回れば おそらく必ずどこかのお店のショーケースの中に同じグレードのものが並んでいるはずであれば 実店舗を構えていないわたくしどものお店の商品を実物を手にすることなくそれ相応のお値段でお買い求めいただけるはずがないという結論に至りました。この珊瑚の指輪は 見とれてしまう美しい逸品です。しかし わたくしの手元に留めおいて そのままというのは良いことではない商品はお客様のもとで大切にお使いいただくためのものです。主役はわたくしではなくてこの商品と制作に携わった職人や生産業者さんたちです。ほかの鼈甲製品の出品と同じように開始価格100円で出品させていただいてお客様が納得のいくお値段でお買い求めくださって愛用してくださることが良いのではないかと思うようになりました。珊瑚製品はすべて開始価格100円で出品させていただいています。長崎市浜町アーケード街・浜屋百貨店そばでべっ甲の専門店をさせていただいていた頃珊瑚のアクセサリーは「きれいな良いサンゴ」と思える商品だけを取り揃えて販売していました。「売れ筋だから … 」という視点ではなくて「きれいなものだから … 」という基準で厳選していました。長崎出身の方々が帰省してこられるお盆の時期や年末年始に合わせて夏休みや夏祭・長崎のお正月をテーマにしたウインドウディスプレイのメインスペースに高額のかんざしと血赤珊瑚のアクセサリーをたくさんお並べしていました。わたくしどもは珊瑚を専門に商うお店ではありませんので百貨店や珊瑚専門店・貴金属店の販売価格よりお安い金額の正札をお付けしていました。わたくしどものお店の高額の血赤珊瑚のアクセサリーは古くからわたくしどものお店のことをご存知の長崎出身の方々にお買い求めいただいていました。この商品はヤマト運輸のVIP扱いで発送させていただきます。
【送料無料 (当店負担) 発送方法のご案内】2016年の4月から個別の販売を終了して Yahooオークションのみの販売をさせて頂いています。出品をはじめるにあたり「わたくしどもの鼈甲製品を入札してくださる方はどなたもいらっしゃらないのではないか」という不安がありました。それから2年半 169点 (2018年9月10日現在) の商品を出品させていただきました。入札に際してたくさんの方々に参加して頂きました。定価を超える金額で落札して頂けることが増えてまいりました。北海道や九州沖縄県の方には高額の送料をご負担頂いています。実店舗での定価販売を常としてまいりましたわたくしにとっては申し訳ないような複雑な思いがございます。定価を超える金額で落札してくださった方の送料と遠方の方の送料の一部をわたくしどもで負担させていただこうかと迷いました。しかし それも違うような気が致しました。それで 2018年9月11日以降に落札してくださった方の送料はすべてわたくしどもで負担させて頂くことに致しました。落札金額が10,000円未満の場合は郵便局の定形外郵便10,000円を超える商品はヤマト運輸のVIP扱いでお送り致します。 宅急便VIP扱いについて VIP配送は配達の際 車中では専用の鍵のかかるケースに入れて管理され、 お届けの際にはお客様にフルネーム確認をしています。 また必ず社員であるSDが取扱い アルバイトや委託業者の取扱いはされていません。 お受け取りの際には必ず認印かフルネームでのサインが必要です。 (ヤマト運輸さんは個人のお客様からのVIP扱いでの発送は行っていません)【鼈甲業界・現状のご報告】2017年12月の初旬に東京の鼈甲専門店や百貨店で販売されている鼈甲製品の現状を識るべく訪ねてまいりました。限りのある稀少な原材料を使ってお作りしていますので一品一品の商品の厚さを薄くしたものが多く見受けられました。こればかりはしかたのないことでございます。とはいえ その貧弱なつくりと商品におけるデザインのバリエーションの乏しさには愕然とするものがありました。そして なんとも言葉にし難い寂しさがございました。どんなに向上心があっても競争原理がはたらく環境に身をおいていないと人は成長しません。いまから35年ほどまえ わたくしが祖父の下でべっ甲のお仕事をはじめたばかりの頃長崎市の中心商店街・浜町アーケード街には 鼈甲の専門店が8軒ございました。個々のお店が自店の商品の品質を競っていました。それぞれのお店の商品にはそれぞれの個性がありました。そして鼈甲細工の製法がポルトガルや中国から長崎に伝えられて300有余年べっ甲製品を見続けてきた長崎の人達と「良い鼈甲がほしくて長崎に来たんだから」という目的で来店してくださる全国の鼈甲愛好者の方々の容赦なく厳しい視線がありました。すべてを見透かすお客様の存在を意識しながら日々の営業を緊張感を抱きながら過ごしてきました。また 個人で独立して鼈甲製品をつくって小売店に納品している職人たちの胸のうちにも「○○鼈甲店の店頭に並んでいる商品はわたしがつくったもの」という誇りを持って日々制作に励んでいると思わせる感がありました。いまは原材料が枯渇していますので職人の数もほんの少しです。競争原理がはたらかないからでしょう。職人がそれぞれの腕を競っていた頃の勢いはまったく感じられませんでした。また商品のお値段も信じられないほどの高い金額がつけられていました。商品をおつくりするときの原材料の金額や職人の工賃プラスαという高額品から価格のお安い商品に至るまで一貫した基軸が観えてきませんでした。価格体系が壊れてしまっていました。希少価値があるとはいえここまで付加価値をつけてお値段を上げて良いものかと思わせる商品が多々見受けられました。わたくしどもが出品させていただいております商品の定価は現在の鼈甲業者間の販売価格に照らし合わせたものではなく長崎で店舗を営んでおりました頃の販売価格をそのまま明記させていただいております。商品によっては昨今 街中で販売されている価格の三分の二 または 二分の一 のお値段でございます。 わたくしどもの商品は原材料に余裕があった頃にお作りしたものですので商品にボリュームがあります。それぞれの商品のデザインに合う色彩の甲羅をたくさんの原材料のなかからお選びしてお作りしたものばかりでございます。電動式万力の圧力メーターの数字を見ながら鼈甲の原材料をプレスしていくのではなくて手動式の万力を全身の力で回しながら圧をかけて数字ではなくて勘を頼りに微調整をかけていく製造効率など考えないで 納得のいくまで時間をかけて彫刻を施していく数ミリの厚さの違いやほんのわずかな鼈甲色の模様の違い労を惜しむことなく手間暇を費やしてみても遠目にはさして変わらないように見えたりもしますが商品をお付けいただいたときその商品が醸し出す存在感や立体感において似て非なるものという大きな違いがございます。鼈甲業界に余力があるときにわたくしが体調を崩したことでやむなくお店を閉じましたので当時の勢いのある商品が手付かずで手元にございます。鼈甲製品の作り手にとってゆとりがあったころに制作いたしました最期の作品を丁寧に 少しずつ そしてできるだけ永く 出品させて頂きたいという思いを新たに致しました。 長崎市にお住まいの方から鼈甲製品の修理についてのご質問を頂きましたので質問と回答を原文のまま記載させて頂きます。 質問 長崎市民です。とても懐かしく、また閉店を残念に思っておりました。購入後に使用していく中、割れ・カケなどできた場合の修理など、どんな感じになりますか?宜しくお願い致します。(2016年10月 6日 12時 41分) 回答 ご質問ありがとうございます。回答欄は全角300文字以内という字数制限が設けられていて 300文字以内ではうまくお伝えできない内容ですので 字数制限のない商品説明の最下部に回答を追加記載させて頂きます。 わたくしは職人ではございません。長崎でお店をさせて頂いておりました頃は職人を抱えていましたので修理をさせて頂いていました。しかし現在は職人を雇用していませんので修理をする術がございません。商品の修理は造り手と同等もしくはそれ以上の腕のいい職人の手に委ねないとうまくできません。腕の良くない職人の手にかかりますとどんなにすぐれた製品であっても不格好で悲惨なものになってしまいます。幼児の工作のようなハリボテになってしまいます。鼈甲製品は二つに割れたりヒビがはいってしまっても水.卵白.熱.圧力を駆使することで接着部分がまったくわからない新品の状態まで変幻自在に復元することができます。しかし腕の良くない職人ですと接着部分が微妙にわかってしまうできあがりになります。光沢がなくなってきた商品も磨き直しをすることでご購入時と同じ状態になります。しかし腕の良くない職人ですと表面を必要以上に削ってしまい薄っぺらで小さなデザインが崩れておかしなものになります。わたくしの手元にあります商品は鼈甲業に勢いがあったときの腕のいい職人によるものばかりです。鼈甲業は原材料の輸入禁止以前に入手した材料が尽きたところでおしまいです。ほんの一握りの腕のいい職人は高齢で廃業していき息子さんにはあとを継がせていません。長崎市浜町アーケード街.浜屋百貨店そばで鼈甲の専門店をいたしておりましたころは他の鼈甲店の商品であってもすべての修理をお受けして新品と遜色ないところまでの完璧な修理をお受けしていました。わたくしの知る限り わたくしどもの商品を完璧に修理できる腕のいい職人は日本国内には現存しないと思われます。お使い頂いた後には必ず柔らかい布で拭いていただき傷ついたりくもったりしないよう大切にお使い頂ければと切望しています。 質問者様からのお返事 ご丁寧に回答頂きありがとうございます。以前川口鼈甲さんの前を通るたび、いつか落ち着いた大人になって持ちたいな・・・と憧れていました。いざ大人になってみると、浜町の素敵なお店がどんどん閉店し、鼈甲も以前に比べ、大変貴重で、職人さんも減ってしまったようで、大切にするしかないのですね。参考にします。 2005年11月に長崎に住む男性の友人からメールを貰いました。立山町旧知事公舎・美術館跡地に歴史文化博物館がオープン致しました。そのセレモニーに「龍踊り」(諏訪神社秋祭の奉納踊)で娘と家内も参加しました。セレモニー終了後、一般公開前に館内を見学していた所、鼈甲工房が常設されておりました。店内を覗いていたところ家内が身に着けていた川口鼈甲店で購入したブローチ、イヤリング、ペンダントに 職人さんの目が留まり「良いものを持っていらっしゃいますね」と言われました。「主人の友達の川口鼈甲店で買ったんですよ」「川口はいい商品を売ってたから。いまはこれだけの商品は手に入らないので大事に使ってくださいね」その会話を聞いていて嬉しい気持ちになりました。そして 「川口にメールで報告しとかんば…」と思ったのでメールでご連絡いたします。 2017年 秋.長崎に住む女性の友人からメールを貰いました。オークションの商品 楽しみに見ています。今回の簪も粋な感じで、女性なら誰しも憧れる逸品ですね。(元の価格が安すぎのような~もっと高くでいいのでは??)手鏡も素晴らしいです。(べっ甲の手鏡初めて見ました)川口さんの商品.贔屓目かもしれないけど他の出品とは何かが違う別格です。何気なく鼈甲屋さんにはいって商品を見回してみたけど川口さんのオークションの商品のほうがなんかきれい….前に出品していたきれいな飴色一色の銭龜さんどこにもいませんでしたよ。オークションで落札できた人は幸せだと思います。長崎で同じものを買おうとしても無いですから。【専門店としての品格】長崎市浜町アーケード街・浜屋百貨店そばでべっ甲の専門店をさせていただいていた頃「鼈甲の簪を買うために東京から来ました」と仰って来店してくださるお客様が1年に数名いらっしゃいました。「綺麗な簪がこれだけたくさん並んでいると圧巻ですね。 東京にはこれだけ質量ともに充実しているお店はない。 飛行機代を払って長崎まで来てよかった」という身に余るお言葉を掛けていただいていました。そのむかし 祖父はお客様お一人お一人に合わせてご要望を伺いながらデザインを描きオーダーメイドの簪をおつくりしていました。そういう経緯がございましたのでお店のメインスペースには売れ筋商品である洋装のアクセサリーではなくて櫛笄をお並べしていました。メインスペースに売れるものを並べるのはお土産屋さんの流儀自信を持ってお買い上げいただきたい商品をメインスペースにお並べするのが専門店の品格という位置づけでした。 【包装紙を巡るお話】祖父から折に触れて言い聞かされてきた言葉があります。「東京の人たちは大切な方へ何かを贈るとき わざわざ電車に乗って時間をかけて日本橋三越まで出向いて購入する。 近くのお店で売っているものであっても三越の包装紙に包んであることに意味がある 優良品しか扱わない三越のお眼鏡にかなった厳選された逸品をお送りしなければ 先様に対して失礼になる ということ。 うちは鼈甲業において世間様からそういう評価をしていただけるようにならなければいけない という思いを込めて三越百貨店と同じように紙をたくさん使う三つ折りの包み方を続けてきた。 包装紙をただの包み紙だと思ってはいけない。 お店にとって包装紙はいちばん大切なものだから」 「石丸文行堂(当店の向かい側の文具店)には頭が良くて絵が好きな東京の美術大学に通う息子さんがいらして 学徒出陣で出征したまま帰らぬ人になってしまった。 うちの包装紙は その息子さんに描いてもらったもの。 何度も描き直しながら心をこめて描画してくれた。 彼が遺してくれたものを大切に使っていくことが彼に対する川口としての礼儀 包装紙のデザインを描いてくれた人の思いに恥じるようなものを売ってはいけない。 売れるものであれば何でも売る というお店になってはいけない」当時 20歳代前半のわたくしは「たかだか包装紙 そんな大げさな」 と思っていましたが祖父母や父に対してデスマス調の敬語で話すように物心ついた頃から母に厳しくしつけられてきましたので鬼より怖い祖父に意見することはできませんでした。しかし多くの お客様から「この黄色の包装紙 見覚えがある。 長崎出身の知り合いからもらった鼈甲がこの包装紙だった。 『眼鏡橋やグラバー園.平和公園 観光地にあるお土産屋さんの鼈甲店に行くと 2~3人のおばさん販売員に取り囲まれて無理やり買わされることになるよ。 鼈甲を買うんだったら 面倒だけど 浜町まで足を伸ばしたほうがいい』 と言われたので訪ねてきました」というお話を何度も伺いました。長崎出身の方から書いてもらった地図を握りしめて店頭に立ち止まって看板を見上げながら店内に入って来られる光景を何度も目にしました。わたくしはお客様から 包装紙の重さ を教わりました。包装紙をリニューアルするにあたり石丸文行堂の石丸忠重社長にお礼と報告に伺いました。「うちのおじいちゃんの時代にそんなことがあったとは まったく知らなかった。 うちに遠慮しなくていいから」 と快諾していただきました。動物愛護 亀さんが可愛そう 自然との共生 美を求める文化 ・・・これらのことを文字ではなくて絵で伝えることができる人に包装紙のデザインをお願いしたい当時 お仕事を一緒にしていた東京のデザイン事務所勤務の井上里枝さんに相談しました。「この難しい仕事ができるのは版画家の山本容子さんしかいない。紹介してあげようか でも いま あちこちから引っ張りだこの山本さんが川口の仕事を受けてくれるかどうかはわからないけどね」ということでお話がまとまりました。たかだか田舎の個人商店 たかだか包装紙に家が一軒建つほどのお金をかける長崎浜町商店街の友人達から「大きな印刷会社だったらどこにでもあるような包装紙のデザインを無料でつくってくれるのに」と失笑されました。包装紙を新しくして半年後に鼈甲の原材料の輸入禁止が決まりました。10年後にはわたくしが体を壊して完全閉店しました。オークションに出品させていただくようになり取引ナビを介して多くの方々から「完璧な梱包.写真と同じラッピングの素晴らしさ.これほど丁寧なラッピングははじめて そして 写真よりきれいな商品 ‥‥」という身に余るお言葉を頂いています。皆様に感謝するばかりでございます。 【商品デザインについて 】 店舗改築に携わった乃村工藝社東京本社の設計デザイナー氏が初めて長崎浜町の旧店舗を訪れたときの第一声】 川口の商品には色気がある 色気とは女性の胸のふくらみのようなもの 女性は美しく輝きたいという想いで色気のあるアクセサリーに惹かれる 男性は女性から好かれたいと想い色気のあるアクセサリーを好きな女性に贈る 色気は装飾品の生命線 川口の商品はあなたのおじいさんが描いた図案が元になっている あなたのおじいさんには会ったことはないけれど 商品を見ていると おじいさんが考えていたことがわかるような気がする 女性が身につける装飾品の真髄を熟知しておられた 女性のことが大好きで 女性からも好かれていた いい意味での 粋な人 そんな気がする。【川口鼈甲店・ウインドウショッピング】ウインドウショッピング という言葉があります。店舗のショウウインドウを見てまわること消費者にとってウインドウショッピングは購入準備のための行動見てまわることが楽しみであるという定義付けがされています。ロンドン.パリ.ローマヨーロッパの主要都市のメインストリートのお店は閉店後も店頭のショウウインドウがライトアップされているしかし長崎市のメインストリート・浜町の商店街は閉店後は暗くなるお店をリニューアルするのだったら閉店後もナイトショッピングができるようにショウウインドウの明かりは消さないでほしいという要望が東京出身の長崎新聞の記者の方からありました。その提案をすべて反映させたお店をつくりました。作家の永六輔氏.デザイナーの柳川光雄氏.べっ甲職人の佐々木彰一郎氏から異口同音に言われました。「職人は秘伝と言って自分の技術を人に伝えたがらない でもそれは間違っていると思う 自分が苦労して創り上げたものは惜しげもなく人に伝える 伝えることによって自分は日々新たに精進を重ねていく それが ”ほんもの" なのではないか 新しくつくった鼈甲製品をショウウインドウの真ん中に並べましょう そして閉店後に長崎の鼈甲屋さんたちがデザインを模倣しに来る お店が閉まっているから写真撮りもデザインのデッサンも自由にできる それで試作品を作ってみた でもどこか違う 手の内は全部オープンに見せてもらっているのだけど どうしても同じものをつくれない それでこそ 川口が 鼈甲 における ブランド ということの証になる 真似したければ真似してみな 簡単に模倣できるようなものは商っておりません それが 粋 というものなのではないか」五代惇著「老舗の商法・のれんに生きる東京の70店」というご本を介して東京の季節は銀座和光のショウウインドウからはじまるという言葉を識りました。長崎の季節は川口のショウウインドウから ….と長崎の人達に云って頂けるようになりたいという祈りにも似た想いで装飾を施していました。リンク先 川口鼈甲店ホームページ ウインドウショッピングアーカイブス【長崎・軽井沢・川口鼈甲店】 1997年春 郷土史研究史跡探訪グループ・長崎史楽会の会員の御老人が西友長崎道ノ尾店で展示会をしていた会場へ訪ねて来られました。「長崎新聞で川口鼈甲店 が 浜町のお店を閉店したことを知った。私の先代は大正時代に船大工町の川口鼈甲店のお隣で鍛冶屋をしていた。当時長崎の商人は目の前の商いで手一杯だった。しかし川口の創業者は 長崎で繁盛しても東京で認められなければ自分が商っているものは本物とはいえない. だから東京にお店を出す… と言っていた。当時 長崎の鼈甲は外国人が買っていた。川口はその利益をすべて東京出店に費やした。横浜市元町と東京市新橋にお店を出した。長崎と東京は汽車で30時間以上かかっていた時代のこと皇族方宮内省各宮家御用達になり.昭和天皇結納品の鼈甲化粧セットを納めた。夏季には政府高官.各国の大公使が軽井沢に避暑に行くので軽井沢に出張所を設けた。大正12年 関東大震災で東京.横浜の支店は全焼した。太平洋戦争の最中 鼈甲の原材料は輸入できなかった。昭和23年 川口の先々代は神田の旅館に宿を取り長崎県庁東京出張所所長の渡辺氏と二人 管轄官庁の門前に座り込みをして一か月通いつめることで官庁関係者が根負けしてべっ甲原材料玳瑁亀の輸入再開 にこぎつけた。 川口の先々代がいなかったら 今現在 鼈甲は日本国内の店頭に並んでいない。太平洋戦争という地獄を経て鼈甲細工は消滅しなかった。あなたは自分のお店の閉店は自分のお店の歴史に過ぎないと思っている。でもそれは違う。川口鼈甲店の生き死には 鼈甲文化の生き死にそのものなんだ。あの悲惨な戦争を生き延びてきた。鼈甲の原材料の輸入禁止は日米の経済摩擦によるもの太平洋戦争とは違って経済戦争で人の命は奪われない。経済戦争なんかで負けてはいけない。 ここで終わってはいけない。このことをあなたに伝えなければ私は死んでも死にきれない。今 こういうことをあなたに伝えることはとても残酷なことだと思う。 でも ここで諦めないで頑張って欲しい 」お酒の勢いを借りてお話をしに来てくださったその御老人の言葉がわたくしの頭の中から離れることはありませんでした。1993年 永六輔さんのラジオ番組宛に鼈甲についての思いを綴った葉書を出しました。それがきっかけで 永六輔さんと親しいお付き合いをさせていただくようになりました。年に数回お目にかかってお話をさせていただいていました。2005年3月 近況報告の手紙を書きました。ラジオ番組や講演会で永さんがわたくしのことを語ってくださいました。「長崎で 川口 といえば 鼈甲 です。 長崎の目抜き通りの真ん中に堂々としたお店を構える押しも押されもせぬ老舗です。色々なことがありました。お店はなくなりました。川口は体を壊しました。いま 川口は転地療養のため軽井沢で暮らしています。そして体調が良くなってきました。僕も若い頃 体がとても弱かったんです。信州小諸・軽井沢で疎開生活をしているときに元気になりました。だから信州での転地療法が身体にいいということはよくわかるんです。身体が弱い人が信州で暮らすとみんな元気になるということではないのですが,元気になった川口は軽井沢で鼈甲のお仕事を再開しようとしているんです。でも 今現在 お店はない。お店はないけど 何かをしようとしている。いまはまだ 鼈甲といえば 長崎 です。でも 近い将来 日本じゅうの鼈甲愛好者のなかでべっ甲といえば軽井沢 と云われるようになると思います。だって 僕の友達である川口が軽井沢で鼈甲のお仕事を再開したのだから。皆さんこのことを 頭の隅に留め置いていてください」周りの人達から言われました。第一級の文化人である永六輔からこれだけのエールを贈ってもらっていて決起しなかったら漢 (おとこ) じゃない…」そして思いました。「身体が壊れているのだから そんなことを言われても困る。 何より自分はそれほどの人間ではない」以後 永さんとの距離をあけました。それでも永さんの言葉はいつも心の奥で響いていました。 25年以上のお付き合いのある長崎在住の女性の友人がいます。雑誌の編集 全国誌の旅行ガイドの長崎版の制作に携わっている人です。2017年12月30日 お互いの近況報告を兼ねて2時間ほどお電話で情報交換をしました。「長崎といえば カステラ そして 鼈甲鼈甲 といえば 長崎川口鼈甲店が長崎の街からなくなってもうすぐ20年鼈甲といえば長崎 というんだったら長崎の鼈甲屋さんには川口のオークションの商品と同等もしくはそれ以上の商品が並んでいなければおかしい。でも長崎の鼈甲屋さんの商品にはいまどき こんなもの誰が買うの…? というものしか並んでいない。長崎といえば鼈甲 鼈甲といえば長崎それは川口鼈甲店のべっ甲のことだったような気がする。Yahooオークションの川口の鼈甲製品は20年以上前のものそれなのに いま 長崎のどの鼈甲屋さんに並んでいる商品よりも新鮮な輝きがある。オークションは それなりのものをそれなりの安い値段で買うためのものでも 川口の オークションはそうじゃない。次から次に目新しい商品が出品される。大げさな言い方をすると世界の名画をオークションで落札して入手するそういう異質の空気感がある」 と言われました。それぞれの人たちのそれぞれの言葉がひとつの流れとして繋がりました。鼈甲の原材料の輸入禁止を日本政府が決めて四半世紀の時間が流れました。それでも 鼈甲製品を身につけたいと思ってくださる方々がおいでになることでひとつの文化の華を紡いでいくことができている。オークションに入札してくださる方々への感謝それがすべてでございます。