これがツアーの全容。最後はヨーロッパで倒れたわけですが、本作のバッファロー公演はその直前「北米#2」32公演目にあたるコンサートでした。このショウからはIEMアルバム『OVER NIGHT IN BUFFALO』が登場し、「A REALITY TOUR初の極上サウンドボード!」と大きな話題になりました。本作は、そのIEM音源に極上オーディエンスをマトリクスさせた極上品なのです。
実際、本作のサウンドはほとんどオフィシャル級。IEMらしさは肉声カウントやクリック音(「The Loneliest Guy」「The Motel」「Sunday」「Battle For Britain」など)だけに残り、全体を貫くのは公式作品やFM放送ばりのプロフェッショナルな音世界。もちろん、IEMが持っていた強力なギター・サウンドはしっかりと残っていながらバランスも均整が取れており、決して浮かない。それ以上に驚異的なのがギターそのものの“鳴り”。全体のバランスが取れているだけでなく、オーディエンスならではのトーンが強力なギター・サウンド自体も自然にしているのです。IEM音源『OVER NIGHT IN BUFFALO』に親しまれた方ほど、「あのギターがここまで自然になるなんて」と驚かれることでしょう。
そして、そのサウンドで甦ったのがツアー後期ならではのショウ。このツアーの基準は公式ライヴ盤『A REALITY TOUR』となるわけですが、それは2003年のツアー序盤。末期の本作はセットが異なり、オフィシャルでは聴けない「Looking For Water」「Station To Station」「Quicksand」「Modern Love」「The Bewlay Brothers」「Queen Bitch」「Suffragette City」がたっっぷりと楽しめるのです。特にクラシックス「The Bewlay Brothers」「Queen Bitch」は、このツアーでも本作が初演なのです。しかも、選曲を変えるのは手間もかかる一種の挑戦。その前のめりな意識と気分一新のムードはショウ全体にも波及しており、マニアが「後期の名演」と呼ぶだけはある素晴らしいショウなのです。