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★内容: 1946年(昭和21年)4月に発表された「堕落論」によって、坂口安吾は一躍時代の寵児となった。作家として生き抜く覚悟を決めた日から、安吾は内なる〈自己〉との壮絶な戦いに明け暮れた。他者などではない。この〈自己〉こそが一切の基準だ。安吾の視線は、物事の本質にグサリと突き刺さる。
『坂口安吾は小説よりもエッセイが面白い、と言う人は多い。(中略) メッセージ性、というより、伝えたい思いが強いのだろう。言葉は時に刃のように、時には喉をうるおす泉のように、ストレートに胸に響く。一言半句だに魂のこもらぬ言葉はない。別世界の構築が必要な小説では、こうは行かない。しかし、どのエッセイも思想家や評論専門の人のそれとは違う。骨の髄から小説家である人にしか書けないものだ。小説家ならではの視点で、人間心理の曖昧さ、複雑さに深くえぐり込んでいく。小説を書くのと同じ情熱がエッセイの中にもあり、同じ意欲がみなぎっている。「意慾的創作文章の形式と方法」の中で、精神の深い根底から発する作者の「意慾」が「小説の文章」には不可欠なのだと説いているが、その意味では安吾のエッセイはすべて、「小説の文章」に近いものであるといえるかもしれない。
全エッセイを眺めわたすと、思いのほか文学論が多いのも頷ける。「文章の一形式」では人称を曖昧にできる日本語の特質に言及し、「文字と速力と文学」では文字の特性に着目する。カタカナを多用する奔放なイメージによるものか、語りの視点や構成法などには無頓着な作家と思われがちだが、実は繊細な感受性をもって「小説」の形式を考察し、文体の微妙な差異にこだわる生真面目な文章家であった』 (七北数人;解説 より)
ピエロ伝道者
FARCEに就て
ドストエフスキーとバルザック
意欲的創作文章の形式と方法
枯淡の風格を排す
文章の一形式
茶番に寄せて
文字と速力と文学
文学のふるさと
日本文化私観
青春論
咢堂小論
墜落論
墜落論(続墜落論)
武者ぶるい論
デカダン文学論
インチキ文学ボクメツ雑談
戯作者文学論
余はベンメイす
恋愛論
悪妻論
教祖の文学
不良少年とキリスト
百万人の文学
★著者、坂口安吾は1906年(明治39年)、新潟県新潟市生まれ。東洋大学文学部印度哲学倫理科卒。同人誌『言葉』の創刊に関わり、その後継誌『青い馬』に「風博士」、「黒谷村」等を発表。戦後の1946年に随筆「堕落論」、小説「白痴」を発表すると大きな反響を呼び、時代の寵児となった。純文学のみならず、歴史小説、推理小説、文芸から時代風俗まで広範に材を採るエッセイまで、多彩な領域にわたって活動した。無頼派と呼ばれる作家の一人で、その後の多くの作家にも影響を与えた。主要な作品はほかに「桜の森の満開の下」、「不連続殺人事件」、「安吾捕物帖」、「信長」など。1955年死去(享年48)。
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