アレステッド・ディヴェロップメントが切り開いたオルタナ・シーンに彗星のごとく登場したフュージーズ。ヒップホップの固定概念を根底から崩し、まさにルーツ回帰を示してくれた最高の存在だ。メンバーは今さら紹介するのもなんだが、紅一点のローリン・ヒル、そしてワイクリフとプラーズの3人で結成され、94年に『Blunted On Reality』でデビューを果す。生楽器のセッションで生み出すレゲエ・フレイヴァーと、オーガニックなヴォーカルで歌うローリンのスピリチュアルなライムに、ヒップホップながらも思わずうっとりとさせられる。しかし、この頃はまだこの日本での認知度も低く、大きな話題を掴むまでにはいかなかったが、この96年の2ndアルバムにて、日本をはじめ世界が彼女らの存在を認めることとなる。前作同様、同じテイストで先に匂わした“Fu-Gee-La”のシングルを皮切りに、そのままカヴァーした“No Woman, No Cry”、ロバータ・フラックの名曲“やさしく歌って”が大爆発を起こしていったのだ。ヒップホップのルーツが何処で生まれ、海を渡り、そしてソウル・ミュージックと融合して誕生してきた過程を、たった一枚のアルバムで表現してしまった最初のアーティストである。