6歳から楽器に目覚め,90年代を代表するR&Bグループ,Tony! Toni! Tone! のメイン・ヴォーカルを務めたラファエル・サディーク。8年ぶりのアルバムは,薬物依存症で亡くなった兄ジミー・リーの名前を冠し,人間の内面を綴った深みのある作品となりました。音楽誌のインタビューで,ラファエルは,「一般的に薬物依存はネガティブなイメージばかりで見られがち。でも,人間は多かれ少なかれ,何かに依存して生きている。薬物依存=悪ではなく,何かに悩み,その解決策としてドラッグに賭けた人間が薬物依存症になったのであって,誰もが深い悩みを何かにすがって解決しようとしている・・・」といった趣旨の発言をしています。 また,本作では,突然,曲が切れて次の曲が展開するなど,一瞬,録音編集のミス?とも思えるようなアレンジが多々みられますが,人生においては突然悲しい出来事に直面するなど状況が急転することがままあるということを表現したものだとか。 さて,そんな本作を冒頭から順に追って行くと・・・。 ミステリアスで不穏な空気さえ漂うサウンドで幕を開ける「Sinners Prayer」。罪人の祈り(救いの祈り)というタイトルそのままの悲壮感さえ漂うヴォーカルとコーラス。終盤のうねるようなベースラインにビターなサウンドには底知れぬ絶望感を感じさせます。 「The World Is Drunk」は,美しくもクリスタルなピアノに打ち込みビートが何ともクールなアップテンポ。淡々としたヴォーカルに密かに漂う虚無感。美しくも悲しいナンバーです。サビのファルセットが何とも甘美な「Something Keeps Calling」は,幻想的で,ずっと浸っていたいほど心地良いミッドテンポ。我を忘れてうっとりしてしまうギター・ソロも最高です。シタールの音色で幕を開ける「Kings Fall」も幻想的。フルートなどを交えたメロウなサウンドと,ロックぽいノリが絶妙なバランスで交錯する1曲です。 小曲「Belongs To God」は,ゴスペル・アーティストRev. Elijah Baker Sr の「My Body Belongs To God」のオマージュ。R&Bの源流とも言える素朴で温もりのあるサウンドに心が癒されます。 「Rikers Island」は,アップリフティングな掛け声で始まるミッドテンポ。ヒリヒリするぐらいにスリリングでキャッチーなサビがたまりません。この曲のメロディーはそのままに,哀感を帯びたギターによる陰鬱なバラードにアレンジしたのが「Rikers Island Redux」。リーディング・ポエトリー風のヴォーカルが胸に刺さります。ちなみにRikers Islandとは,厳しい環境で知られるライカーズ刑務所があるニューヨーク市の島のこと。 というわけで,シリアスで奥の深いテーマを,オーセンティックなR&Bサウンドで描いた,濃密で心に響くアルバム。これは傑作です。
Jimmy Lee
また,本作では,突然,曲が切れて次の曲が展開するなど,一瞬,録音編集のミス?とも思えるようなアレンジが多々みられますが,人生においては突然悲しい出来事に直面するなど状況が急転することがままあるということを表現したものだとか。
さて,そんな本作を冒頭から順に追って行くと・・・。
ミステリアスで不穏な空気さえ漂うサウンドで幕を開ける「Sinners Prayer」。罪人の祈り(救いの祈り)というタイトルそのままの悲壮感さえ漂うヴォーカルとコーラス。終盤のうねるようなベースラインにビターなサウンドには底知れぬ絶望感を感じさせます。
「The World Is Drunk」は,美しくもクリスタルなピアノに打ち込みビートが何ともクールなアップテンポ。淡々としたヴォーカルに密かに漂う虚無感。美しくも悲しいナンバーです。サビのファルセットが何とも甘美な「Something Keeps Calling」は,幻想的で,ずっと浸っていたいほど心地良いミッドテンポ。我を忘れてうっとりしてしまうギター・ソロも最高です。シタールの音色で幕を開ける「Kings Fall」も幻想的。フルートなどを交えたメロウなサウンドと,ロックぽいノリが絶妙なバランスで交錯する1曲です。
小曲「Belongs To God」は,ゴスペル・アーティストRev. Elijah Baker Sr の「My Body Belongs To God」のオマージュ。R&Bの源流とも言える素朴で温もりのあるサウンドに心が癒されます。
「Rikers Island」は,アップリフティングな掛け声で始まるミッドテンポ。ヒリヒリするぐらいにスリリングでキャッチーなサビがたまりません。この曲のメロディーはそのままに,哀感を帯びたギターによる陰鬱なバラードにアレンジしたのが「Rikers Island Redux」。リーディング・ポエトリー風のヴォーカルが胸に刺さります。ちなみにRikers Islandとは,厳しい環境で知られるライカーズ刑務所があるニューヨーク市の島のこと。
というわけで,シリアスで奥の深いテーマを,オーセンティックなR&Bサウンドで描いた,濃密で心に響くアルバム。これは傑作です。