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類まれな同時代史の書き手が急逝して一年半――。妻が語る二十五年間の記憶。「ぼくが死んだらさびしいよ?」が口癖だったあの頃……。けんかばかりしていたけれど憎めない。博覧強記の東京人。生涯一「雑誌小僧」。毎日が締め切りでも、いつもふらふら飲み歩く生粋の遊歩者。「怒りっぽくて優しく、強情で気弱で、面倒だけど面白い」夫との多事多難な日々が鮮やかに蘇る。そう、みんなツボちゃんを忘れない。
レビューより
自分のような凡人には、こんな結婚生活は耐えられないと思ったし、ツボちゃんのおこりっぽさや、文章の端々から滲み出る佐久間さんの性格の強さというか、気の強さに辟易とする気持ちもありましたが、そういう部分も隠さずに書いておられるのが、さすが新聞記者だった人だと思いました。
夫である坪内氏そのものが、文学関係の人物にありがちな、かなり自己中心的な人格なのにもかかわらず、大喧嘩はしつつも、そのさばき方が誠に見事です。又、女性関係の経歴に関しても、時には愚痴を披露しながらも、かなり冷静に記述しています。
坪内祐三さんの大事なご実家が競売にかけられ、坪内さんが買い戻そうとしたのに叶わなかった事、自身の死を予感していたような亡くなる直前の事、泥酔癖など色々体を痛めていたことはイメージしていたが、何が本当なのか、奥様の佐久間さんが書いてくれないかとずっと待っていた。すぐに入手し、一晩で読了した。佐久間さんの後悔のお気持ちに、私まで胸が痛い思いがした。様々なエピソードを知り、私も何か心にストンと来て、納得できた気がする。でも切ないし、本当に勿体ない。「佳き人は早く逝く」と言うが、やはり哀し過ぎる。落ち着いたらまた読み返したい、大切な1冊になりました。
本から離れられない仕事をしている夫婦のその夫の急逝と人生を語る妻は、元新聞記者で、文章がク-ルなので、一味も二味も違う内容になっている。二人とも編集者でもあったので、雑誌やら古本やら作家の話が随所に出て来て、本好きにはたまらない。
坪内祐三の伝記と言ってもよく、これまで出版されていた坪内の著作や前の妻・神藏美子の写真+エッセイ「たまもの」が、彼の人生のどういう時期にどう位置付けできるのかを知ることができる。その死の前後とくに監察医務院での司法解剖、2000年に新宿でヤクザにボコボコにされて入院・手術を受けた事件、「たまもの」でも曝露された坪内ー神藏ー末井昭の三角関係、そこに妻として入っていく著者の佐久間など、坪内祐三の人生の軌跡をなぞることになる。
本書は冒頭、突然亡くなられた際の状況から説き起こし、出会いと坪内さんとの暮らし、2000年に因縁をつけられ、暴行を受け、重傷を負った際の話、坪内氏の友人関係や人となりのエピソードなど、か書かれていて、あっとという間に読み切った。第9章の「怒るひと」では、自動車会社の宣伝部長に住所と名前の入ったコースターを渡され、「書いた本を今度、送ってください」と言われた際、いちどは黙ってコースターを受け取ったものの、あることをきっかけに、その宣伝部長に「おれの住所をいうから自分のところに車を送ってこい」と言ったいうエピソードがなかなかふるっている。また、自分で仕切った還暦パーティでも、あることをきっかけに大爆発したという。一度決めたことが予期せず変更されると不安や怒りを感じるという器質があるようだが、雑誌などの収集癖やデータおたく、方向音痴など、私にも共通する多くの要素を持っているようで、ある面での生きづらさに関しては、共感して読むことができた。