そして第3の奇跡は、そんなライヴの一部始終を捉えきった本作のスーパー・サウンドです。録音したのは、かの“西日本最強テーパー”氏。毎度毎度、「西日本会場のスウィート・スポットを知り尽くしている」「現場より良い音で録る」等々と、言葉を尽くしてご紹介している名匠ですが、彼のコレクションでもズバ抜けたサウンド・クオリティ。今週は、彼の「理想」を体現したDEEP PURPLE『OSAKA 2016(Darker Than Blue 222/223)』も登場しますが、その超傑作を前にしても1/4歩も譲らない。毎度の事ながら不思議なのですが、会場は盛り上がっていながら“最強”氏の周囲には騒ぐ客が皆無で、まるで会場全体を神視線で俯瞰するような美しさも湛えているのです。その上で、“毎度”以上なのが楽音で、サウンドボードのようにダイレクトでありながら、現場感覚・空間感覚もたっぷり。繊細なアルペジオや泣きじゃくるギタートーンが会場を支配しているのが分かりながらも、細やかなタッチまでライン録音のように超・鮮明なのです。曲間など、本作の無音部によーく耳を澄ませていただきたい。極々うっすらと「シー」というヒスが聞こえることに気づかれると思います。もちろん、本作はアナログ・テープ録音ではなく最新機材のデジタル録音。つまり、このヒスは録音テープによるものではなく、現場のPAから漏れ出る極々わずかな電気ノイズ。本作はそんな超・微細な音までも拾い切り、スピーカーごしに届けてくれる超絶録音なのです。